山中龍宏「子どもを守る」
子どもは成長するにつれ、事故に遭う危険も増します。誤飲や転倒、水難などを未然に防ぐには、過去の事例から学ぶことが効果的です。小さな命を守るために、大人は何をすればいいのか。子どもの事故防止の第一人者、小児科医の山中龍宏さんとともに考えましょう。
医療・健康・介護のコラム
ランドセルごとうんていに挟まり小1窒息死 そして全く同じ事故が…対策なければ必ずまた起きる
これまでの2回は、ひも状のものが首にかかって窒息するケースについて取り上げましたが、今回は、構造物に首が引っかかって宙づり状態になり、首だけで自分の体重を支える状態になったことで窒息する事故についてお話しします。

イラスト:高橋まや
遊具に子どもがぶら下がっている!
事例1 :2011年10月、3歳11か月女児。午前9時20分頃、幼稚園の園庭にある登り棒付き滑り台で、他の子どもたちと遊んでいた。登り棒は、本来、登るために設置されていたが、遊具の上部の鉄板の柵をくぐり抜け、登り棒を伝って地面に降りる遊びが常態化していた。当日もいつものように、この棒を伝って地面に降りる子どもの姿が目撃されていた。発生時刻頃、保育士がふと遊具に目をやったところ、登り棒上部の一部水平となった部分(約12.5センチメートル)に首が引っかかった状態で、子どもがぶら下がっているのを発見した(イラスト参照)。すぐに大声で助けを呼んで、子どもを降ろした。降ろした時点では意識がなかったが、呼吸は保たれており、まもなく意識は回復した。すぐに救急要請し、入院。容態は安定しており、翌日に退院となった。柵の間をすり抜けた際に誤って転落し、前 頸部 が登り棒上部の水平部分に引っかかったと推測された。
この遊具は事故より40年前に作られ、現在の遊具の安全基準に適合していませんでした。すでに遊具を製作した会社は存在しておらず、管理も行われていませんでした。
事例2:02年9月、小学1年生男児。金沢市の公園で、ランドセルを背負ったままはしご状のうんていの上で遊んでいたところ、鉄パイプと鉄パイプの隙間(約40cm)に足から転落し、首を挟まれて動けなくなった。後ろ側のパイプにランドセルの底が引っかかり、前側のパイプには本人の首が引っかかった状態で、首で自分の体重を支える状態となり窒息。近くの住民が発見し、病院に運ばれたが死亡した。
事例3:17年1月、小学1年生男児。大阪市住之江区の公園で、ランドセルを背負ったまま友達2人といっしょに複合遊具で遊んでいたところ、ランドセルと首が格子状の鉄製パイプに引っかかって宙づりになり、首が圧迫された状態になった。約2か月後に死亡した。
2014年6月、国土交通省から「 都市公園における遊具の安全確保に関する指針(改訂第2版) 」が出され、この中で、このようなケースが「不適切な服装、持ち物に起因する事故」として挙げられています。事例2と事例3を見比べると、年齢、事故が起こった場所や発生状況が似通っているのがよくわかると思います。1件でも死亡事故が起こった場合には、必ず同じ事故が起こると考えて対処することが不可欠なのです。
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