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中川恵一「がんの話をしよう」

医療・健康・介護のコラム

免疫の低下ががんを招く 現代人のストレスとがんの気になる関係

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免疫へのブレーキ外してがんを攻撃 免疫チェックポイント阻害剤

免疫の低下ががんを招く 現代人のストレスとがんの気になる関係

 コロナ禍での生活はストレスがたまります。第3波が広がるなか、「勝負の3週間」が終わりましたが、外出自粛は思うように進んでいないようです。みんな、ストレスの発散を求めているようにも感じます。このストレスは、免疫の働きを抑制する要因を指します。

 がんと免疫は深い関係があります。私たちの体の中では毎日たくさんのがん細胞が発生していますが、免疫細胞がこれを排除し増殖するのを阻止してくれます。がん予防の点では、免疫の働きはとても大切です。私も膀胱(ぼうこう)がんを経験しました(一昨年の12月28日に内視鏡切除)が、一番ショックだったのは、自分の免疫力に自信を持てなくなったことです。

 本庶佑先生が開発の道筋をつけたオプジーボは、「免疫チェックポイント阻害剤」と総称されています。免疫細胞は常に体の中を監視していて、細菌、ウイルスなどの他、がん細胞も異物として排除しています。しかし、免疫の働きが強くなりすぎるとアレルギーや関節リウマチといった自己免疫疾患などが発生してしまいます。このため、免疫力を自ら抑制する仕組みが備わっており、「免疫チェックポイント機構」と呼ばれます。

 がん細胞は、正常な細胞から「進化」していく際に、いろいろな能力を身につけます。その一つが、免疫から逃れる「免疫逃避」です。がん細胞は、PD-L1という物質をつくり出し、免疫細胞に発現している物質(PD-1)と結合させて、攻撃にブレーキをかけます。オプジーボは、免疫細胞のPD-1と結合することで、PD-L1によってかけられたブレーキを解除し、免疫細胞による攻撃を再開させるのです。

絶え間なくストレスにさらされる現代社会

 さて、ストレスはがんの引き金になるとよく言われますが、ストレスを抱えていると本当にがんになりやすいのでしょうか?

 人類の進化を振り返ると、もともとストレスは敵に襲われるなど、生命の危機に直結するような事態に遭遇したときに生じるものでした。このようなストレスを感じると、ストレスホルモンが分泌され、交感神経を刺激して体が「戦闘モード」に入ります。すると免疫システムが抑制され、心拍数や血圧を高めたり、逃げるために走る方にエネルギーを振り向けたりするのです。

 実は、免疫機能の維持には莫大なエネルギーが必要なため、生命の危機が迫るような事態では、免疫にコストをかけてはいられないのです。

 しかし、生物が進化をとげた野生環境では、このようなストレスは一時的なものであり、危機を回避できればストレスホルモンは減り、体はいつもの状態に戻ります。

 これに対して、現代社会のストレスは、主に仕事や人間関係によってもたらされるため、常にストレスを感じるような人が増えています。絶えずストレスにさらされると免疫が抑制され続けるため、がんのリスクが高まるのではないかと考えるのはとても自然です。

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中川 恵一(なかがわ・けいいち)

 東京大学大学院医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。
 1985年、東京大学医学部医学科卒業後、同学部放射線医学教室入局。スイスPaul Sherrer Instituteへ客員研究員として留学後、社会保険中央総合病院(当時)放射線科、東京大学医学部放射線医学教室助手、専任講師、准教授を経て、現職。2003~14年、同医学部附属病院緩和ケア診療部長を兼任。患者・一般向けの啓発活動も行い、福島第一原発の事故後は、飯舘村など福島支援も行っている。

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