Dr.三島の「眠ってトクする最新科学」
医療・健康・介護のコラム
本格的な冬が到来。どうして、寒くなると布団から抜け出せないのか
こんにちは。精神科医で睡眠専門医の三島和夫です。睡眠と健康に関する皆さんからのご質問に、科学的見地からビシバシお答えします。
いよいよ本格的な冬がやってきました。毎朝布団から抜け出すのが大変ですよね。冬に起きづらいのは寒さのためだけでしょうか? いえ、そうではありません。私たちの睡眠パターンには季節変動があり、たとえ部屋を暖かくしていても寝起きが悪くなるのです。その理由についてご説明します。
北に行くほど、睡眠のリズムが遅れることで
気温や湿度、天候など、季節とともに私たちを取り巻く自然環境は変化します。その中でも、日の出・日の入り時刻や日照時間は睡眠に大きな影響を及ぼすことが分かっています。2020年に、日の出が最も遅かったのは1月7日、日の入りがもっとも早かったのは12月7日でした。例年、この前後で冬至が来ます。今年の冬至は12月21日、一年の間で最も昼が短く、夜が長くなる日です。
私たちの睡眠リズム、つまり入眠時刻(自然に眠気が来る時刻)や覚醒時刻(自然に目覚める時刻)は、目から入ってくる光、具体的には主に太陽光や人工照明で調整されています。日の出の時刻が遅くなれば、それと連動して体内時計の時刻も遅れるため、睡眠調整に関わる脳内の神経群(神経核)の活動や、ホルモン、体温リズムの位相(タイミング)が夏よりも遅くなってしまいます。出社や登校の時刻は年中変わらないので、目覚まし時計などを使って同じ時刻に起きようと努力しても、起きにくいのはそのためです。
緯度の高い地域ほど日の出・日の入り時刻の季節間変動が大きいため、体内時計の遅れも大きくなります。北欧ノルウェーで行われたある調査では、11月~12月初旬から始まる冬の間、地域住民の約4人に1人が入眠困難や覚醒困難(起きづらさ)に悩んでいると報告されています。この症状を現地では「冬季不眠症(mid-winter Insomnia)」と呼んでいます。冬季不眠症に悩む患者さんを調べてみると、睡眠調節に大事な役割を果たす血中メラトニン分泌リズムや深部体温リズムの位相が、春から秋にかけての暖かい季節に比べて、大幅に遅れていることが明らかになっています。
より緯度の低い日本では、北欧よりは季節変動は小さいのですが、やはり夏に比較して冬には、起床時刻が遅れることが分かっています。日本は南北に長い国なので、緯度によって日の出・日の入り時刻の影響の度合いが異なります。北海道など高緯度地域では、北欧と同様に起きづらい冬の朝を迎えている方が多いと思います。
1 / 2
【関連記事】
※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。
※個人情報は書き込まないでください。