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脳腫瘍 悪性でも機能温存し手術…寝起きの頭痛に注意
脳の細胞などに腫瘍ができる「脳腫瘍」。腫瘍ができる場所により様々な種類があります。良性であれば手術で完治できる場合が多く、悪性の場合でも手術法の進歩に伴い、脳の機能を温存しながら腫瘍を切除することも可能となっています。(諏訪智史)
年1万人発症
脳腫瘍は、国内で年間1万人程度が発症するとされています。脳やその周囲の細胞の遺伝子が、何らかの理由で変異することが原因です。遺伝子の変異は、大半が生まれた後に起こる後天的なものですが、原因はよくわかっていません。
主に良性である脳腫瘍には、脳を覆う膜にできる髄膜腫、ホルモンを分泌する下垂体にできる下垂体腺腫、神経を覆う細胞にできる神経 鞘腫 があります。いずれも脳の周りの組織にできます。一方、脳内にできる悪性のもので代表的なのが神経 膠腫 (グリオーマ)です。悪性度が最も高いものは、 膠芽腫 (グリオブラストーマ)と呼ばれます。
脳腫瘍のうち、髄膜腫と神経膠腫がそれぞれ3割近くを占めるとされます。肺など別の臓器にできたがんが、脳に転移して腫瘍を作るケースもあります。
代表的な症状は、良性か悪性かを問わず、寝起きの頭痛です。腫瘍があると、睡眠中に脳内の圧力が高まり、朝起きた時に強い頭痛を感じやすくなるとされています。頭痛だけでは判断できませんが、長期間症状が続く場合は要注意です。
歩く時につまずきやすくなったり、けいれん発作が起こったりすることもあります。腫瘍ができた部位によっては、手足のまひや言葉がうまく出ない、視野が欠けるなどの症状が出ることがあります。良性ならば、少しずつ腫瘍が大きくなり、症状も緩やかに表れます。悪性の場合、腫瘍が急激に大きくなることが多く、数週間で症状が一気に悪化することがあります。
正常な組織や重要な神経を傷つけず、できる限り腫瘍を切除する手術が治療の基本です。脳内はメスを入れても痛みを感じません。「覚醒下手術」という手法では全身麻酔で頭蓋骨を開いた後、患者の意識を再び回復させます。医師は手術中、絵を見せて話しかけるなどして脳の機能が保たれているか確かめながら、慎重に腫瘍を取り除きます。
放射線やレーザー
腫瘍が小さかったり、摘出できない場所にあったりする場合、ピンポイントで照射する「ガンマナイフ」や「サイバーナイフ」などの放射線治療も有効です。
悪性の神経膠腫は、脳の中にしみ込むように広がります。腫瘍を完全に切除するのは難しく、再発を遅らせることが期待される治療法の一つが「光線力学療法」です。腫瘍に集まる薬を使いながらレーザー光を当てると、化学反応により手術で取り切れなかった腫瘍を死滅させます。一部の大学病院などが導入しています。
膠芽腫には、頭皮に貼った電極から発生させる電場の力で、腫瘍の細胞分裂を抑える治療法があります。
関西医大教授の 淺井 昭雄さんは「脳腫瘍は適切な予防法がなく、腫瘍が大きくなる前に発見することが重要です。起床時の頭痛が2週間以上続くなど典型的な症状があれば、精密検査を受けるのが望ましいでしょう」と話しています。
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