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ペットと暮らせる特養から 若山三千彦 

医療・健康・介護のコラム

特養の人手不足解消へ、逆に職員配置数を増やすべきと考える理由

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10室単位の2ユニットに夜間は職員1人だけ

 なぜ、介護職員にとって耐えられないような劣悪な介護業務内容になってしまうのか。それはひとえに職員配置数の少なさによります。

 ここから、国が定めるユニット型特別養護老人ホームの職員配置数について、単純にモデル化した説明をさせていただきます。わかりやすくするため、思いっきり単純化した説明にしてあり、実際とは少し異なることをご了承の上でお読みくだ下さるようお願いいたします。

 ユニット型特別養護老人ホームとは、内部がユニットに分かれているタイプのホームです。ユニットとは、入居者様の居室10室と共有スペースで構成される空間です。私が経営するさくらの里山科の場合は、共有スペースとしてリビングキッチンとトイレ3か所、浴室、脱衣室があります(共有スペースの内容はホームによって異なります)。ユニットとは、10LDKのマンションのような空間と言えます。

 国が定める職員の配置数は、一つのユニットについて、日中は職員1名配置、夜勤は職員0.5名(つまり2ユニットに1人)配置です。この職員配置数に基づいて、介護報酬は計算されます。

リビングやユニットに職員不在の時間も

 ユニットに職員が1人しかいない状況では、まともな介護はできません。例えば、職員が入居者様のお部屋でオムツ交換をしていたら、その間、リビングは職員不在になってしまいます。そこで入居者様が転倒してもわかりません。マンツーマンで職員が付き添って食事介助しなければならない入居者様が複数いる状況で職員1人体制では、長時間お食事をお待たせしてしまいます。ユニットの外に共有の機械式の浴槽(車椅子のまま、あるいは寝たきりで入れる浴槽)があります。それを使っている間は、ユニットは長時間、職員不在になってしまいます。こんな状況では、オムツ交換も入浴も食事介助も、十分にはできません。入居者様のお話し相手など到底不可能です。

 夜勤となると、2ユニットに1人しか職員がいませんので、片方のユニットで介護をしている間は、もう片方のユニットは職員不在になってしまいます。夜間は寝ている入居者様が多いので大丈夫だろうと、国は考えているのでしょうが、夜間でもオムツ交換やトイレ介助は頻繁にありますし、認知症で昼夜逆転している方もいます。それなのに、半分の時間は職員不在では、まともな介護などできるわけがありません。

 これらが、職員が望まない劣悪な介護業務なのです。このようなことをしているので、人として耐えられなくなって辞める職員が多いのです。

納得できる介護を行えば赤字に

 夜勤の勤務時間を8時間とすると、それ以外、すなわち日中の勤務時間は16時間です。常勤職員は1日8時間勤務しますので、日中は2人の常勤職員が配置される計算になります。夜勤は0.5人です。従って国が定める職員配置数は、1ユニットにつき1日2.5人となります(※くどいようですが、これはあくまで単純化したモデルです)。

 この職員配置数で、まともな介護をすることは不可能なので、私のホームでは日中4時間以上は、職員2人体制をとっています。また、2ユニットで1人、機械式浴槽を使うための専属パート職員を配置しています。これらを計算すると、私のホームでは1ユニットにつき1日3.25人の職員を配置していることになります。国の基準よりは、0.75人多いことになり、これが赤字の原因ですが、うちの職員たちが納得できる介護を行うためにギリギリ必要な人数です。本当はもう少し多くしたいのですが。

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若山 三千彦(わかやま・みちひこ)

 社会福祉法人「心の会」理事長、特別養護老人ホーム「さくらの里山科」(神奈川県横須賀市)施設長

 1965年、神奈川県生まれ。横浜国立大教育学部卒。筑波大学大学院修了。世界で初めてクローンマウスを実現した実弟・若山照彦を描いたノンフィクション「リアル・クローン」(2000年、小学館)で第6回小学館ノンフィクション大賞・優秀賞を受賞。学校教員を退職後、社会福祉法人「心の会」創立。2012年に設立した「さくらの里山科」は日本で唯一、ペットの犬や猫と暮らせる特別養護老人ホームとして全国から注目されている。20年6月、著書「看取みといぬ文福ぶんぷく 人の命に寄り添う奇跡のペット物語」(宝島社、1300円税別)が出版された。

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2件 のコメント

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欧州でも同じです

おしどり

明けましておめでとうございます。欧州在です。 こちらでも、正に、若山様が書かれていることが議論されています。老人ホームの人手不足はここでも深刻で...

明けましておめでとうございます。欧州在です。
こちらでも、正に、若山様が書かれていることが議論されています。老人ホームの人手不足はここでも深刻ですから。労働条件アップの労働組合デモ等もあるのですけど、給料アップや残業ダウンなどは要求していない。それも、もちろん課題だけれど、一番の問題は、今の人数では、自分たちがしたい看護、入居者の人権を守れる看護はできない、もっと一人一人の入居者に時間が必要だ、と。自分たちの仕事に誇りを持てないなら、お金のためだけに働くのなら、他の職業を選ぶよ、と。
やる気があるし、正義感があるからこそ、むなしくなって、離職してしまうんですよね、なので、もっと人手不足になる、という悪循環。
若山様の言っていることは間違っていないと思います。

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介護は本来、すばらしい仕事

みるく

介護はやりがいのある仕事と思い、やりたいと思っています。でも最初の一歩を踏み出せない理由がまさに、記事にもある「劣悪な介護をしなければいけなくな...

介護はやりがいのある仕事と思い、やりたいと思っています。でも最初の一歩を踏み出せない理由がまさに、記事にもある「劣悪な介護をしなければいけなくなってくるのだろうな…」という懸念です。

今の介護の世界の現状、おかしいですよね。劣悪な環境の中、それでも頑張っている職員の皆さんの努力には本当に頭が下がります。ありがとうございます。
(たったひとりの、しかも部外者の自分には、いったい何ができるんだろう…)

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