文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

いつか赤ちゃんに会いたいあなたへ

医療・健康・介護のコラム

いつかは終わる不妊治療 でも思いは消えず、一生抱えて生きていく人も

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

 先日、SNSでFineメンバーのTさんのこんなつぶやきを見ました。

「不妊治療のクリニック通わなくなって、10年ぐらい () つのに
まだ、昨日のことのように思えることが時々あります。
新政権となり、不妊や不妊治療に関する報道が続き
そんな話題を身内にしたら
『まだ(Fineの活動)を続けているんだね。(子どもを)あきらめたのに。
もう、とっくに離れていると思ってた』
そんな言葉を投げかけられました。

理解されていると思っていたから
何ともいえないキモチ……。1か月くらい前の出来事でした」

不妊には終わりがない

いつかは終わる不妊治療 でも思いは消えず、一生抱えて生きていく人も

 私もこのつぶやきを読んで、切ないような、やるせないような、それこそ何とも言えない気持ちになりました。そうなんです。これは事実。「不妊には終わりがない」んです。こう言ってしまうと、不妊治療中の方にはとてもつらいかもしれませんが、不妊は自己認識の問題なので、人によっては終わりがありません。

 もちろん、出産したら自分が不妊治療をしたことはもう記憶が薄れてしまい、その時のつらさも心の痛みも遠い昔のことになる人もいて、大半はこちらのほうかもしれません。けれど、そうでない場合は、たとえ妊娠・出産しても、「不妊」であったという思いは一生なくならず、その思いを自分の一部として生きていく人もいるのです。

 あ、ただし、だからといって、それは「いつまでも不幸のどん底にいる」ということではありません。不妊を自分の人生の一部として受け入れ、自分なりにある程度まで消化、昇華できているということです。Fineのほとんどがこういったメンバーで、「自分が不妊でとてもつらい思いを味わった。だから、他の人にはもうこんな思いを味わってほしくないな。そのために自分ができることって何かあるのかな。私の不妊の体験は、誰かの役に立つのだろうか」、そんな思いを持ってFineで様々な活動をしています。私もそのひとりです。

1 / 2

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

meet-baby_title2-200-200

いつか赤ちゃんに会いたいあなたへ

松本 亜樹子(まつもと・あきこ)
NPO法人Fineファウンダー・理事/国際コーチング連盟マスター認定コーチ

松本亜樹子(まつもと あきこ)

 長崎市生まれ。不妊経験をきっかけとしてNPO法人Fine(~現在・過去・未来の不妊体験者を支援する会~)を立ち上げ、不妊の環境向上等の自助活動を行なっている。自身は法人の事業に従事しながら、人材育成トレーナー(米国Gallup社認定ストレングス・コーチ、アンガーマネジメントコンサルタント等)、研修講師として活動している。著書に『不妊治療のやめどき』(WAVE出版)など。
Official site:http://coacham.biz/

野曽原 誉枝(のそはら・やすえ)
NPO法人Fine理事長

 福島県郡山市出身。NECに管理職として勤務しながら6年の不妊治療を経て男児を出産。2013年からNPO法人Fineに参画。14年9月に同法人理事、22年9月に理事長に就任。自らの不妊治療と仕事の両立の実体験をもとに、企業の従業員向け講演や、自治体向けの啓発活動、プレコンセプションケア推進に力を入れている。自身は、法人の事業に従事しながら、産後ドゥーラとして産後ケア活動をしている。

いつか赤ちゃんに会いたいあなたへの一覧を見る

最新記事