アラサー目前! 自閉症の息子と父の備忘録 梅崎正直
医療・健康・介護のコラム
わけあってマスクできません…コロナと障害
昨冬まで使っていたファンヒーターが不調のため、買い替えようと家電量販店に行った。店員さんの詳細な説明を聞いている間、洋介は機嫌よく広い店内を歩きまわっている。今年、高校生になった長女が後ろについて歩いてくれていたが、しばらくすると、暗い表情で戻ってきた。
「ここ、マスクしてないと入れなんじゃないの?……と、わざと聞こえるように言われた」という。自閉症の人には珍しくないが、このコロナ禍にあっても、洋介はマスクをしていることができないのだ。誰もが感染に対して神経質になっているご時世、僕らは何を言われても仕方ないな、と思っているが、思春期の娘にはかわいそうなことをした。

イラスト:森谷満美子
感覚過敏で5分が限界
新型コロナウイルスの感染が拡大し始めた4月頃、洋介にもマスクが必要だろうと、何度か試してみたものの、近所のスーパーに入って5分もすれば自分ではぎ取ってしまう。服の刺激が嫌いで脱いでしまうなど「感覚過敏」がある人では、マスクをすることも難しい。 ヨミドクター連載「街で障害のある人と出会ったら~共生社会のマナー」では、マスクができない認知症高齢者への理解を求めていたが、洋介に限らず自閉症などの人と家族にとっても、コロナ禍のマスク問題は悩みの種となっている。
店員さんが顔見知りのスーパーなど、身近な施設ではマスクなしでも大目に見てくれている。しかし、好きな人には、顔を数センチまで近づけるくせがあるので、ひやひやすることもある。見知らぬ人の中は怖いので、春以降、遠出や電車移動はしていない。洋介が通う通所施設でも、一部、頑張って克服した人はいるものの、大部分の利用者が今もマスクができないため、施設からお出かけする際は広い公園など野外を選び、他の人たちにできるだけ接近しないようにしているという。施設では「マスクをつけられません」と書いたプレートを作っていて、洋介も一つもらって身に着けている。
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