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山中龍宏「子どもを守る」

医療・健康・介護のコラム

ネット購入、手作りの子ども服には注意して! ひもやフードで首絞まり死亡事故も…カワイイだけで選ばない

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再発防止には事故の詳細な情報が不可欠

 日本小児科学会雑誌には、08年3月号からほぼ毎号、「Injury Alert(傷害速報)」欄に傷害事例が掲載されています。これは、日本小児科学会の会員から投稿された事例について、傷害が発生した状況を詳しく聞き取り、これまでに報告されている事例も紹介し、この傷害を予防するためにはどのような対策が必要かについてコメントが述べられています。学会誌に掲載された1~2か月後には、日本小児科学会のホームページに収載され、誰でも見ることができます。

 事例2は、12年6月号の日本小児科学会雑誌に掲載されました。実は、このような事例は以前から多発しており、上述の報告書でも、安全確保に関する提言が出されていました。08年6月には、全日本婦人子供服工業組合連合会からも「 子供用衣類の設計に関する安全対策ガイドライン 」という自主基準が出されていたにもかかわらず、また同じ傷害が発生したのです。そこで、学会誌に事例が掲載された直後、学会は、経済産業省のいくつかの部署、東京都の部署、消費者団体にこの傷害速報を送りました。

 これを見た消費者団体から業界団体に申し入れがあり、12年7月半ばに「子ども服JIS(日本工業規格=現・日本産業規格)化に向けての意見交換会」が開かれました。この事例は新聞記事にも引用され、同年秋から経済産業省が委員会を設置し、業界団体、消費者団体、学識経験者など関係者が集まって議論が始まりました。13年3月の委員会で、子ども服の引きひもに関するJIS素案が決まり、15年12月、子ども服のひもの安全基準に関する「JIS L4129(よいふく)」が制定され、7歳未満の子ども服には、危ないひものついたデザインの製造、供給が禁止されました。

 この委員会の委員長から、「きちんとした情報を取って、それを公的な雑誌に載せたことが大きなきっかけになったことは確かです。こういう情報が社会を動かすことがあるというあたりを、学会でお話しいただけるとありがたい」というお礼のメールが、日本小児科学会に送られてきました。

 傷害速報の記事を完成させるにあたって、送られてきた情報でよくわからない部分は、主治医に何度も問い合わせをしています。事例2では、主治医から保護者の方にお願いして、着ていたパーカのメーカー、型式の情報と実物の写真、玄関ドアの取っ手の写真を送っていただきました。主治医や保護者の方の協力があって初めて、詳細な情報として記録することができたのです。「二度と同じ事故を起こさない」ためには、詳細な情報が不可欠であることを理解していただきたいと思います。

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山中 龍宏(やまなか・たつひろ)

 小児科医歴45年。1985年9月、プールの排水口に吸い込まれた中学2年女児を看取みとったことから事故予防に取り組み始めた。現在、緑園こどもクリニック(横浜市泉区)院長。NPO法人Safe Kids Japan理事長。キッズデザイン賞副審査委員長、こども家庭庁教育・保育施設等における重大事故防止策を考える有識者会議委員も務める。

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