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僕、認知症です~丹野智文46歳のノート

医療・健康・介護のコラム

まるでギャンブル? 「使いたい」と思えない成年後見制度

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楽しみを失ってお金を払う

 ……これ、たまたま気の合う人が選ばれればラッキーですが、価値観が違う人だったら最悪だと思いませんか?

 私自身は競馬はやりませんが、好きな人の気持ちはわかります。生活に支障のない範囲で、ちょっと馬券を買うくらいは認めてほしい。でも、後見人が「競馬は賭け事。ダメ絶対」と思っている人だったら、「あなたの財産を守るため」と、全面的に禁じられてしまうかもしれません。

 頑張って稼いだお金を自分の好きなことに使えないなんて。その報酬として、月に数万円程度を支払わねばならないと聞いて、率直に「こんな制度、使いたくないなあ」と、思ってしまったのでした。

私たちも無関心ではダメ

 実際にはそんなケースばかりではないでしょうし、後見人がいてよかったということも、もちろんあるでしょう。ただ、自分自身のこととして考えると、成年後見という形をとらなくても、家族や信頼できる仲間がそばにいて、本人の気持ちをよく聞いて、一番いいと思える選択をしてくれれば、それでOKなんじゃないの?とも思いました。現実には、そうはいかない場合も多いから、この制度ができたのでしょうが……。

 本来は私たちを支えてくれるはずの制度なのに、いままで何も知らずにいたことを反省しました。私がフォーラムに呼ばれたのは、当事者の声に耳を傾けて制度をよりよくしていこうという動きが、ようやく始まろうとしている表れでしょう。今後に期待しつつ、「成年後見制度があるから安心だ」と思える仕組みになるよう、私たちもどんどん意見を言っていかねばと思いました。(丹野智文 おれんじドア実行委員会代表)

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丹野智文(たんの・ともふみ)

 おれんじドア実行委員会代表

 1974年、宮城県生まれ。東北学院大学(仙台市)を卒業後、県内のトヨタ系列の自動車販売会社に就職。トップセールスマンとして活躍していた2013年、39歳で若年性アルツハイマー型認知症と診断を受ける。同年、「認知症の人と家族の会宮城県支部」の「若年認知症のつどい『翼』」に参加。14年には、全国の認知症の仲間とともに、国内初の当事者団体「日本認知症ワーキンググループ」(現・一般社団法人「日本認知症本人ワーキンググループ」)を設立した。15年から、認知症の人が、不安を持つ当事者の相談を受ける「おれんじドア」を仙台市内で毎月、開いている。著書に、「丹野智文 笑顔で生きる -認知症とともに-」(文芸春秋)。

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