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医療相談室

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膝の痛みで階段の昇降ができず、生活が不便

 28年前にスキーで転倒し、左前十字(じん)帯断裂となり、太ももの筋肉を移植する再建術を受けました。5年前ぐらいから左膝が痛むようになり、変形性膝関節症と診断され、2年前に 高位(こうい)(けい)(こつ)骨切(こつき)り術を受けました。術後の経過は良好で、しばらく散歩や旅行を楽しんでいたのですが、半年ほど前から階段の昇降時に激しく痛むようになりました。

 現在、平地歩行には問題ありませんが、階段の昇降ができない状態です。術後2年足らずでこのような状態になってしまったことに大変ショックを受けています。主治医には、将来は人工膝関節にしなければならないが、年齢的(54歳)にはまだ早いといわれています。現在は定期的にリハビリに通い、そこで指示された運動を毎日行っているほか、週末は自転車で20~30キロほど走っていますが、悪化も改善もしておりません。階段の昇降ができないので、外出時など不便を感じています。何か他にできることはないでしょうか。(54歳男性)

まず痛みの原因を特定し、リハビリ、治療方針に生かす

 大関信武 東京医科歯科大学整形外科(膝関節・スポーツ医学専門)

 高位脛骨骨切り術は、内側型(ないそくがた)の変形性膝関節症(以下、膝OA)に対する手術治療です。この手術を行ったということは、内反膝(ないはんひざ)(O脚)があり、内側の軟骨が傷んだ状態で、膝関節の内側の痛みが主訴だったと想定されます。

 以前に(28年前に手術を受けたとして話を進めます)前十字靭帯再建を行ったということですが、前十字靭帯損傷には半月板損傷を合併することが多く、当時の手術で、内側半月板損傷に対して内側半月板部分切除術も一緒に受けていた可能性があります。現在は、半月板をできるだけ修復して温存する手術を行いますが、当時では切除術を受けていた可能性が高く、その後、徐々に軟骨の摩耗が進み、膝OAに至ることが考えられます。

 また、前十字靭帯再建術の術式にも大きな変遷があります。当時の再建術では、解剖学的・生体力学的に正常な位置に靭帯を再現し切れていない可能性が高く、残存した前十字靭帯の緩みが、膝関節の前方及び、回旋の不安定性を残し、変形性膝関節症の一因になったと考えられます。膝の不安定性が強く残っている場合、私たちは高位脛骨骨切り術と同時に前十字靭帯再々建術を行うこともあります。しかし、同時に行う手術は、時間や手技の煩雑さの観点から、どの症例に両方同時に行うのがベストかはまだ議論があります。

 このように、前十字靭帯再建術後の膝OAの病態は通常とは異なり、複雑です。高位脛骨骨切り術を行うことで、症状がどこまで改善するかは、その膝の術前の状態により異なります。そして現時点で重要なことは、階段昇降ができない膝の痛みの原因が何かということです。

 高位脛骨骨切り術の(ばっ)(てい)術は、すでに行ったのでしょうか。抜釘術の際には関節鏡で膝関節の軟骨や半月板など、関節内の状態を確認でき、残存した痛みの原因を特定することにつながります。高位脛骨骨切り術によりO脚が改善され、X脚寄りになると、今度は外側の軟骨が傷む可能性があります。また、膝蓋(しつがい)大腿(だいたい)関節の痛みが出ることもあります。あるいはO脚が改善されても、やはり内側の痛みが残っているのかもしれません。

 体重コントロールはもっとも重要なファクターですが、大腿四頭筋(特に内側広筋)の強化や、膝蓋骨の可動性を十分出すためのマッサージやリハビリ、股関節・臀部(でんぶ)・体幹などの安定性を出すエクササイズを十分に行っても改善がない場合、やはり人工関節置換術が選択肢になるでしょう。

 しかし、確かに人工関節を行うには、54歳ではまだ早いと言われると思います。近年では、幹細胞やPRP(多血小板 血漿(けっしょう) )を使用した再生医療の広告を目にすることも多く、症状が緩和される方がいるのも事実ですが、人工関節置換術を回避するまで改善できるとは考えられておらず、過度の期待はできません。また、半膜(はんまく)(よう)筋などの筋肉が原因の場合、超音波ガイド下での注射が有効なこともあります。痛みの原因が何かを、身体所見及び、MRIや超音波などの画像所見から特定してもらい、リハビリ内容を含めた治療方針に生かすことが、現在できることだと思います。

 大関 信武(おおぜき のぶたけ) 整形外科専門医・博士(医学)。日本スポーツ協会公認スポーツドクター。一般社団法人日本スポーツ医学検定機構代表理事。2002年、滋賀医科大卒。15年より、東京医科歯科大勤務。ヨミドクターでコラム「 スポーツDr.大関のケガを減らして笑顔を増やす 」を連載中。

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