新・のぶさんのペイシェント・カフェ 鈴木信行
医療・健康・介護のコラム
全身に水疱を繰り返し 指はくっつき 皮膚がんも
ここは、ある下町にあるという架空のカフェ。オーナーののぶさんのいれるコーヒーの香りに誘われ、今日もすてきなゲストが訪れて、話が弾んでいるようだ。(ゲストとの対話を、上下2回に分けてお届けします)
【今月のゲスト】
宮本恵子(みやもと・けいこ)さん
1955年生まれ。表皮水疱症の当事者。特定NPO法人表皮水疱症友の会DebRA Japan(http://debra‐japan.com/)代表理事。
表皮水疱症は全身の皮膚と粘膜に水疱(水ぶくれ)とびらん(剥離(はくり))を繰り返す難病。医療者にも社会にも理解されず、この病気と診断が確定するまで43年かかった。根本的な治療法がない現在、表皮水疱症と生きる意味を考え、この社会に堂々と生きるチカラを持てるよう、「何事も諦めなければ道は拓(ひら)く」をモットーに、日々新たな活動に取り組んでいる。札幌市在住。
表皮水疱症の宮本恵子さん(上)
「明けましておめでとうございます」
カフェの前の通りには、近所の神社への初詣客がたくさん行き交っている。正月は、私のカフェにとって稼ぎ時。開店に向けて店先を掃除していると、声を掛けられた。以前にもお越しいただいた宮本恵子さんだ。おしゃれで、ゆったりとしたコートを着こなして、笑顔を私に向けている。
「正月から開店しているって聞いて、来ちゃいました」
ありがたい。ちょうど開店時間なので、準備はできている。暖まっている店内に案内した。
「すてきなコートですね」
思ったままをスッと言葉に出した。
「私ね。締めたり、体にフィットする服は着られないの」
「表皮水疱症(ひょうひすいほうしょう)……だからですか?」
毎日、できた水疱を針で
この病名は、前にお越しになった際に教えてもらった。カウンター席に腰かけ、ハーブティーを注文しながら、彼女は持病の表皮水疱症について説明してくれた。
この病気は、全身に水疱が次々にできてしまう。水疱は、服でこすれたり、圧迫されたりする場所にできやすい。毎日、できた水疱を探しては、それを針などでつぶさないとならないのだという。国の難病にも指定されている。
症状は比較的軽い人から重症の人までいて、宮本さんはやや重症の部類に入る。彼女の場合、水疱は体の表面だけでなく、食道にもできてしまう。そうなると、何日も食事ができなくなるという。
水疱は手足の指にもできやすい。今ではほとんどの指がくっついてしまっているという。確かに、宮本さんは両手先に包帯を巻いている。病名から、いわゆる水ぶくれができる病気を想像していたが、そんなレベルではないことに驚いた。
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