田村専門委員の「まるごと医療」
医療・健康・介護のコラム
意思確認の話し合いに本人参加は1% 介護医療院調査
意思表示が可能な早期での実施を訴え

人生の最終段階をどう過ごし、どんな最期を迎えたいか。要介護高齢者の長期療養・生活施設である介護医療院において、本人が参加した意思確認の話し合いが行われたのは、わずか1%。日本介護医療院協会の鈴木龍太会長(鶴巻温泉病院理事長)は12月1日にオンラインで実施された日本慢性期医療協会の記者会見で、こんな調査結果を発表した。入所者の平均要介護度は4を超えており、認知症の進行などで意思表示が難しい現実があるとして、鈴木氏は、介護医療院への入所よりももっと早期の、本人が意思表示できる段階で話し合いを持つことが重要だとしている。
介護医療院は、療養型の医療施設と従来の介護施設の中間的な位置づけにある施設で、2018年に新設された。主に療養病床などからの移行が進みつつある。発表によると、20年9月には全国539施設、3万3820床ある。
アンケートは8月、介護医療院396施設に行い、143施設から回答があった(回答率36%)。入所者の総数は約9000人で要介護度の平均は4.2だった。本人が参加した意思確認の話し合い(意思確認カンファレンス)が行われたかどうかを尋ねた設問では、4~6月に延べ1933回行われていたカンファレンス総数のうち、本人参加は26回(1.3%)にとどまった。
ACPへの誤解や混乱も
アンケートの結果は、12月2、3日にオンラインで開催された、第28回日本慢性期医療学会(学会長・田中志子内田病院理事長)のシンポジウムのひとつ「ACPをどうとらえるか」でもテーマになった。ACPは「アドバンス・ケア・プランニング」の略で「人生会議」の愛称でも知られる。シンポでは、将来、意思表示できなくなった場合に備えて、本人が家族らとあらかじめ話し合っておくという定義を基に話し合われた。
鈴木氏によると、介護医療院ではターミナルケアの計画策定が施設基準として義務づけられていることを、ACPが義務づけられていると受け止めた向きがあった。このため、鈴木氏自身、患者不在の話し合いであっても「ACPを実施した」と従来、誤解していたという。もちろん、家族らとの意思確認の話し合いは行われているが、ACPとは別の呼び名を考えるべきだとした。そのうえで、最初のACPは、患者本人が自分で意思表示ができる早期の段階で行っておくことが必要だと訴えた。また、慢性期の現場では「本人に聞きましょう」を合言葉にして、ACPの周知を図るのはどうかと提案した。
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