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薬が増えた「潰瘍性大腸炎」…治療の選択肢広がる

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 「潰瘍性大腸炎」は、大腸の粘膜に炎症が起きる難病です。症状が改善しにくい患者に使える薬が増えてきており、治療の選択肢が広がっています。(利根川昌紀)

薬が増えた「潰瘍性大腸炎」…治療の選択肢広がる

  国内患者22万人

 この病気は、下痢や血便、腹痛などの症状が出ます。治療で良くなっても、しばらくして再び症状が出てくることもあります。発熱や貧血、体重の減少などに悩まされる人もいます。

 患者の大腸の粘膜に炎症が起こる原因は、本来、病原体から体を守る免疫細胞が誤って過剰に働くためと考えられています。

 国内の患者は、推計22万人です。年代は幅広く、70歳代や80歳代で発症する人もいます。腸内細菌のバランスの乱れや食の欧米化などが発症に関わるとされていますが、詳しくはわかっていません。

 通常は、薬で大腸の炎症を抑え、症状が出ない状態を保つようにします。

 多くの患者が使うのは、5―ASA製剤(メサラジン)やステロイド薬です。

 ステロイド薬は、副作用に注意が必要です。使い続けると、顔がむくんだり、体重が増えたりすることがあります。

 脚の付け根の骨が 壊死えし したり、骨粗しょう症になったりする恐れもあります。このため、原則、長期間にわたって使いません。ステロイド薬をやめると、再び症状が出てしまう場合などは、免疫の働きをコントロールする免疫調節薬を使います。

  生物学的製剤

 それでも症状が治まらない場合は、生物学的製剤などの薬を検討します。

 これらの薬は、免疫細胞の活性化を促す物質・サイトカインの働きを抑えたり、炎症を招く免疫細胞が腸内に入るのを防いだりします。

 治療に使えるこうした薬は最近、増えてきています。

 東京都内の会社員男性(45)は10年ほど前に潰瘍性大腸炎を発症しました。2018年に症状が悪化し、血便が治まらず、高熱も出るようになりました。そこで、「TNFα」というサイトカインの働きを抑える生物学的製剤「レミケード」などを使うと、炎症が治まりました。

 北里研究所病院(東京都港区)炎症性腸疾患先進治療センター副センター長の小林拓さんは、生物学的製剤などについて、「注射薬や点滴薬、飲み薬という具合に投与の方法も様々です。患者さんの生活スタイルなどによって薬を選択します」と説明します。

 過剰な免疫反応を抑える治療には、「血球成分除去療法」もあります。患者から血液を取り出し、装置で炎症の原因となる白血球を除いて再び血液を体内に戻します。安全な治療法とされていますが、頻繁に通院することが必要です。

 様々な治療を行っても症状が治まらない場合は、大腸を摘出する手術に踏み切ることもあります。

 東邦大医療センター佐倉病院(千葉県佐倉市)IBDセンター長の鈴木康夫さんは、「症状が抑えられていれば、食事制限などは必要ありません。ただ、免疫を抑える薬を使っている人は、感染症にかかると重症化する恐れがあります。こまめな手洗いやマスクの着用といった感染予防に努めることが大切です」と話しています。

 

 

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