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精子は互いに助け合い卵子を目指す

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 不妊に悩むカップルの約半数は男性側に原因があり、近年男性不妊症の検査、治療の重要性が増してきている。東北大学大学院工学研究科生体流体力学分野教授の石川拓司氏らの研究グループは、複数の精子が集まって泳ぐことで遊泳速度・効率が高まる協調遊泳の効果を検討。精子同士が助け合って卵子を目指すことが分かったと Physics of Fluids(2020;32:101901) に発表した。男性不妊に対する治療効果が期待できるという。

遊泳速度を最大16%増加

 これまで、個々の精子における遊泳については、受精過程における生物学的重要性が高いことから集中的に研究されてきた。しかし、精子間の相互作用は不明なままで精子の集団遊泳は完全には解明されていない。そこで石川氏らは、運動している精子と精子の間に働く流体相互作用について、力学法則に基づくシミュレーションにより解析。精子が集団化することで遊泳速度・効率が高まる協調遊泳の効果を明らかにした。

 精子が泳ぐことでつくられる液体の流れが他の精子の運動を後押しするかたちとなり、精子は単独より複数で遊泳する方が早く効率的に泳ぐことができた (図) 。2個の精子が並んで泳ぐと前の精子は速く、後ろの精子は遅くなるが、鞭毛の弾性流体力学的同期の効果により遊泳速度を最大16%増加させることが分かった。

図.精子がつくる液体の流れを可視化

精子は互いに助け合い卵子を目指す

精子がつくる流れにより、隣の精子は早く効率的に泳ぐことができる
(東北大学プレスリリースより引用)

 精子は受精を達成するために、体長の約3,000倍もの距離を泳ぐ必要があり、このような協調遊泳の効果は、長距離を速く確実に泳ぎ切るのに重要で、受精を達成する自然の機序を表している。

 これらの効果は、精子数が少ない状態でも密度が高まれば得られるものであり、運動性が良好で数が少ない乏精子症患者の精液でも通常の精子運動の状態へと引き上げられる可能性がある。協調遊泳を利用して精子の運動性を高めることで、男性不妊に対する治療効果が期待できる。

 同氏は「今回の研究によって精子遊泳の物理的な理解が進み、精子数の遊泳効果が解明されたことで、乏精子症患者における不妊治療法の開発が今後さらに進むことが期待できる」と展望している。(慶野 永)

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