メディカルトリビューン
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男性脱毛症治療薬が自殺念慮に関係 フィナステリド、45歳以下で顕著な関連性
男性型脱毛症(AGA)治療に用いられる5α-還元酵素II型阻害薬フィナステリドをめぐっては、投与中止後も性欲減退、勃起機能不全(ED)といった副作用が続くポストフィナステリド症候群(PFS)の存在が指摘されており、精神面への悪影響も懸念されている。米・Brigham and Women’s HospitalのDavid-Dan Nguyen氏らは、世界保健機関(WHO)の国際的な症例登録データベースを用い、フィナステリドの使用と自殺念慮および心理的有害事象との関連を検討。特に45歳以下のAGA患者で関連性は顕著であったと、 JAMA Dermatol(2020年11月11日オンライン版) に報告した。
国際データベースから3,200例超を解析
Nguyen氏らが使用したのは、153カ国からあらゆる薬剤の有害事象を収集し、2,000万件以上の安全性レポートを登録するWHOのデータベースVigiBase。登録された症例を対象に、不均衡分析で用いられる報告オッズ比(ROR)を使用し、フィナステリド使用と自殺念慮および心理的有害事象の関連を調査した。さらに、フィナステリドの適応症〔前立腺肥大症(BPH)/AGA〕と年齢(45歳以下/超)で層別化し、両者との関連について感度分析を行った。
VigiBaseには、フィナステリド使用者における自殺念慮に関する報告356件と、心理的有害事象に関する報告2,926件が登録されていた。解析の結果、フィナステリド使用と自殺念慮(ROR 1.63、95%CI 1.47~1.81)および心理的有害事象(同4.33、4.17~4.49)の間に有意な不均衡シグナルが認められた。
類似薬では関連性認めず
感度分析では、45歳以下の若年患者(ROR 3.47、95%CI 2.90~4.15)およびAGA患者(同2.06、1.81~2.34)において、自殺念慮の増加に対する有意な不均衡シグナルが認められた。一方、高齢のBPH患者の他、フィナステリドと異なる作用機序を持つが似た適応症を有するミノキシジルとタムスロシン塩酸塩、似た作用機序を持つが異なる安全性プロファイルを有するデュタステリドでは、そのようなシグナルは検出されなかった。
以上の結果について、研究チームのQuoc-Dien Trinh氏は「若い男性の脱毛症患者にフィナステリドを処方する際には、自殺念慮と心理的有害事象を考慮に入れるべきことを示している」と指摘。一方、「これらがフィナステリドと関連する理由を理解するには、さらなる研究が必要である」とコメントしている。(平山茂樹)
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