しあわせの歯科医療
健康・ダイエット・エクササイズ
健康長寿のエリート、85歳からの男性の寿命を分けるのはこんにゃくをかむ力!?
よくかめること、栄養の知識…この二つがそろっていることが大切
――50歳から歯を失う理由は、歯周病や、さらに歯茎が下がってくると、根元の方から虫歯になるケースも増えてきますね。
かむ力を維持するには、歯周病をきちんと治療し、再発しないように予防していくことが基本です。私自身は、3DSと言って、歯に被せるトレーに殺菌剤を入れて毎晩5分間装着して、歯周病を起こすプロフィロモナス・ジンジバリス菌や虫歯の原因になるミュータンス菌を抑える治療法を研究し、自費診療で提供しています。それも有用な管理方法です。とにかく、虫歯や歯周病を予防して、生野菜などしっかりよくかんで食べる習慣を身につけるのが、かむ力を育て、維持することにつながると思います。
――「8020」を達成している人が50%を超え、最近、年を重ねても多くの歯が残っている方が増えています。健康長寿という観点からはいいことですね。
あごの骨というのは、歯の根にある歯根膜から刺激を受けて作られます。歯がなくなると、あごの骨がどんどん溶けて低くなってしまいます。すると入れ歯が動いてかみにくくなります。歯を失った時に入れ歯を安定させるためにも8020は大切なんです。特に女性は男性と比べてあごの骨が細いので、早い時期に総入れ歯にしていると、80歳になるころには,折れそうなほどあごの骨が薄くなっている方もいます。そうなると入れ歯が動いてしまってかめません。生涯にわたってよくかんでいくためには、自分の歯を維持するのは重要なことです。
――歯周病があると高齢者では 誤嚥 性肺炎の原因にもなり、お口の管理の重要さへの認識が広がっています。高齢者施設を取材すると、年々、多くの歯が残っている要介護者が入ってきて、歯磨きが大変だという話も耳にします。
そこは重要なポイントですね。2000人の80歳の方を調査した時、歯の本数と健康状態との関連を調べると、確かにたくさんの歯が残っている方は元気なのですが、実は部分入れ歯の方よりも総入れ歯の人の方が健康状態はいいこともわかりました。歯を失ってしまうと歯周病はなくなり、口の衛生管理もやりやすいですから。一方、部分入れ歯だと歯周病をお持ちの方が多く、歯周病菌は誤嚥性肺炎や心血管疾患や糖尿病、認知症にも関係しています。ですから、きちんと口の中の衛生状態を管理して、できるだけ自分の歯を維持し、年を重ねていよいよ管理が難しくなったら歯を抜いて総入れ歯にするという選択肢もあります。
――今回の研究を通じて、特に興味深かったことは何でしょうか。
かめる口を維持することと、栄養の知識を持って毎日の食生活に生かすことの大切さです。よくかめることと栄養の知識の二つがそろわないと、バランスのいい栄養食になりません。栄養のバランスを考えながら、意識していろいろな食品を食べること。私自身、反省を込めて思うのですが、男性も自分で調理する習慣を持つと栄養への関心が高まるのでいいのではないかと思います。
花田信弘(はなだ・のぶひろ)
鶴見大学歯学部探索歯学講座教授。1953年福岡県生まれ。福岡県立九州歯科大学歯学部卒、同大学院修了。米国ノースウェスタン大学博士研究員、九州歯科大学講師、岩手医科大学助教授、国立感染症研究所部長、九州大学教授(厚生労働省併任)、国立保健医療科学院部長を経て、2008年より現職。
2 / 2
【関連記事】
※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。
※個人情報は書き込まないでください。