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渡辺専門委員の「しあわせの歯科医療」

医療・健康・介護のコラム

健康長寿のエリート、85歳からの男性の寿命を分けるのはこんにゃくをかむ力!?

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健康長寿のエリート、85歳からの男性の寿命を分けるのはこんにゃくをかむ力!?

 日本人の平均寿命は女性が87歳、男性が81歳で、女性は過半数が90歳を超える。一方、男性でそこまで生きる人とそうでない人の違いは何か。かむ力という観点から調べた研究が今年発表された。岩手県の85歳の男女343人(男性138人、女性205人)を2002年から15年間追跡調査したところ、85歳の時点でこんにゃくやちくわといった、軟らかい食品をかむことができなかった人は5年半後に全員が亡くなっていた。どうしてかむ力が寿命を分けるのか、かむ力を維持するためにはどうすればいいのか……。この研究にかかわった鶴見大歯学部探索歯学講座の花田信弘教授に聞いた。(聞き手・渡辺勝敏)

――この研究は、超高齢の方を対象にかむ力と寿命に関係があるかどうかを調べた研究ということですね。

 80歳で20本の歯が残っている「8020」を長年推進していますが、2000年に本当に8020は健康長寿に役立つのかを明らかにするために、岩手、新潟、愛知、福岡県の80歳の方、2000人を対象に運動能力と残っている歯の関係を調べたことがあります。片足で何秒立てるかといったことを調べると、歯が残っている人ほど運動能力が高いことがはっきりわかりました。その後も地域で継続してデータを取っていて、岩手県歯科医師会がまとめたデータを今回、私たち鶴見大学で統計的に分析したところ、このような結果が出たので論文(Nutrients 2020 , 12, 3315; doi:10.3390/nu12113315)を発表しました。

――具体的にはどのように調べたのですか。

 85歳というと多くの方が入れ歯です。総入れ歯のかむ力を判定する山本式総義歯性能判定表というものがあって、29食品をかみやすいものからかみにくいものまで6段階に分けています。そのうち下の表にある15種類の食品について、「かめるか」「かめないか」を自分で書いてもらって、その結果と寿命を見たわけです。表にはありませんが、「1」はスープ、「2」はおかゆです。ご飯は「3」、こんにゃく、ちくわは「4」になっています。その結果、85歳の時にこんにゃくとちくわが「かめない」、と回答した男性は5年半後には亡くなっていたわけです。対象は自宅で暮らしている高齢者で、85歳の男性と言えば、平均寿命を超えていますから、健康エリートのような方たちです。統計的に処理して、寿命とかむ力との相関が見られた食品がこんにゃくとちくわ、それにご飯も一定の相関が見られました。一方、この年齢の女性については、かむ力と寿命との関連は見られませんでした。

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――こんにゃくをかめるかどうかが、どうして寿命にかかわっているのでしょうか。

 こんにゃくがかめない、ということは、これより硬いものは一層かむのが難しくなります。いろいろな食品をかむこと、食べることができないと、栄養が偏るので、それが寿命にかかわってくるのではないかと考えています。かめないと、どうしてもそうめんやおかゆなど流し込めるものや、野菜でも煮物が多くなります。生野菜には抗酸化作用のあるビタミンCやEが含まれていますが、熱で壊れてしまいます。抗酸化作用から注目されるナッツ類もかめないと食べられません。炭水化物、たんぱく質、脂質の三大栄養素やビタミン、ミネラルなどバランスよく摂取するにはかむ力が重要です。

――どうして女性ではかむ力と寿命の相関が出てこなかったのでしょうか。

 現在、解析しているところですが、元々女性は寿命が男性よりも6年ぐらい長いので、90歳以降を見ると、相関が出てくるかもしれません。ここからは想像ですが、この世代では、台所仕事は女性任せの方が多いでしょう。自分で食材を選んで調理をしているので、女性の方が栄養知識が豊富な方も多いし、自然といろいろな食品を食べているということではないでしょうか。

――超高齢者の寿命にかむ力が関係している、というお話ですが、かむ力を維持したり、回復したりするにはどうすればいいのでしょうか。

 国民健康栄養調査で示されているように、かむ力は50歳代から年を追うごとに衰えてきます。虫歯や歯周病で少しずつ歯を失っていくためです。岩手県では私も調査に入ったことがありますが、85歳で20本以上の歯が残っている方もいますが、ほとんどは総入れ歯。ゴマのような食品は裏に入ると痛いし、リンゴのような前歯でかむものは総入れ歯だと難しくなります。どうしても食べられる食品に制約がかかってきます。入れ歯でかみにくい方は、入れ歯の土台を合うように調整してもらって下さい。インプラントはよくかむことはできますが、歯周炎にならないようお掃除などの管理をしっかりしなければいけません。

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渡辺勝敏(わたなべ・かつとし)
読売新聞記者(メディア局専門委員)。1985年入社。 秋田支局、金沢支局、社会部を経て97年から医療を担当。2004年に病院ごとの治療件数を一覧にした「病院の実力」、2009年に医療健康サイト「ヨミドクター」を立ち上げた。歯科については歯茎や歯根があやしくなってきた10年来、患者としても関心を持たざるを得なくなっている。立命館大学客員教授。

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