文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

ペットと暮らせる特養から 若山三千彦 

医療・健康・介護のコラム

今年は3匹の犬・猫が入居者と一緒に仲間入り 一方で19歳の超高齢猫とのお別れも

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

 今年、特別養護老人ホームさくらの里山科には、愛犬、愛猫と一緒に入居した方が3人おり、虹の橋(ペットが死後に行く場所という伝説があります)に旅立った猫ちゃんが1匹いました。特別養護老人ホームでは、もちろん入居者様との出会いと別れが大変多いのですが、さくらの里山科の場合、ペットたちとの出会いと別れも毎年あります。

 愛犬や愛猫と一緒に入居した3人の方は、これまでご紹介してきたような特別な事情がある人達ではありません。重度の介護が必要になり、自宅などでの生活を続けていくのが不可能な状況になりながら、愛犬、愛猫を置いていくわけにはいかず、さくらの里山科以外に選択肢がなかった、という事情はありますが、難病や、余命が限られていた、などの特別な事情はありませんでした。

7歳の愛猫と一緒に入居 笑顔が増えた女性

今年は3匹の犬・猫が入居者と一緒に仲間入り 一方で19歳の超高齢猫とのお別れも

  今年の春に入居された青山裕子さん(仮名)は、7歳の愛猫ミーちゃんと一緒でした(写真)。

 それまでは一人暮らしだったのですが、お体の状態が悪くなり、一人で生活することは限界でした。それでも、ミーちゃんと別れたくないと、無理を重ねて頑張っておられました。

 さくらの里山科に入居してからは、青山さんもミーちゃんも穏やかに暮らしています。ミーちゃんの将来に対する心配がなくなり、青山さんの笑顔が増えたとご家族は喜んでいます。

 青山さんとミーちゃんが入居したユニットには、先住猫が4匹いました。そのうち1匹は、本コラムですでに紹介した祐介です。気が強いところがあるミーちゃんは、新参者なのに我が物顔に振る舞っています。先住猫は、ミーちゃんにおびえることはありませんが、何となくミーちゃんをたてています。たまたま先住猫は4匹とも雄なので、ミーちゃんが女王様のような感じに見えます。

ペットと暮らせる有料老人ホームから入居した例も 

  そして先月、隣のユニットに(猫と暮らせるユニットは二つあります)、今橋タエさん(仮名)が、5歳の愛猫プリンちゃんと一緒に入居してきました。今橋さんはそれまで、ペットと一緒に暮らせる住宅型有料老人ホームで暮らしていました。

 住宅型有料老人ホームとは、基本的に介護は行わず、食事、洗濯、掃除などの家事サービスと見守りサービスを行っている老人ホームです。介護の部分は、ホームヘルパーなどの在宅介護サービスを利用します。そのような体制なので介護力には限界があり、今橋さんの状態が重度化すると、そのホームでは対応できなくなり、退居を要請されてしまいます。しかし、プリンちゃんと一緒では、なかなか他のホームは見つかりません。

 途方にくれていたところでご家族が、やや遠方にあった(今橋さんの地元も、有料老人ホームの場所も、さくらの里山科がある横須賀ではありませんでした)さくらの里山科を見つけて、入居の運びとなりました。

有料ホームやサ高住はペットとの入居を認めて

  今橋さんの例は、私としては、高齢者とそのペットが生きる場所を見つけるためのモデルケースだと考えています。と言うのは、私達、特別養護老人ホームは、介護保険の制度上、要介護3以上という重度の状態の方でないと入れないからです。しかし、ペットと一緒に入居したいという問い合わせがあるのは、圧倒的に要介護3未満の方ばかりです。

 皆さん、その段階でペットと一緒に暮らせる場所を見つけられないと、ペットを手放すしかないのです。ですから、軽度の方でも入居できる有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)には、ぜひペットと一緒の入居を認めてほしいです。そして、それらのホームで入居者が重度化して対応できなくなったら、私どもの特別養護老人ホームにペットと一緒に転居する。そうすれば、高齢者が生涯、ペットと一緒に暮らせるようになります。

1 / 3

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

wakayama_michihiko_bunpuku_200-200

若山 三千彦(わかやま・みちひこ)

 社会福祉法人「心の会」理事長、特別養護老人ホーム「さくらの里山科」(神奈川県横須賀市)施設長

 1965年、神奈川県生まれ。横浜国立大教育学部卒。筑波大学大学院修了。世界で初めてクローンマウスを実現した実弟・若山照彦を描いたノンフィクション「リアル・クローン」(2000年、小学館)で第6回小学館ノンフィクション大賞・優秀賞を受賞。学校教員を退職後、社会福祉法人「心の会」創立。2012年に設立した「さくらの里山科」は日本で唯一、ペットの犬や猫と暮らせる特別養護老人ホームとして全国から注目されている。20年6月、著書「看取みといぬ文福ぶんぷく 人の命に寄り添う奇跡のペット物語」(宝島社、1300円税別)が出版された。

ペットと暮らせる特養から 若山三千彦 の一覧を見る

コメントを書く

※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。

※個人情報は書き込まないでください。

必須(20字以内)
必須(20字以内)
必須 (800字以内)

編集方針について

投稿いただいたコメントは、編集スタッフが拝読したうえで掲載させていただきます。リアルタイムでは掲載されません。 掲載したコメントは読売新聞紙面をはじめ、読売新聞社が発行及び、許諾した印刷物、読売新聞オンライン、携帯電話サービスなどに複製・転載する場合があります。

コメントのタイトル・本文は編集スタッフの判断で修正したり、全部、または一部を非掲載とさせていただく場合もあります。

次のようなコメントは非掲載、または削除とさせていただきます。

  • ブログとの関係が認められない場合
  • 特定の個人、組織を誹謗中傷し、名誉を傷つける内容を含む場合
  • 第三者の著作権などを侵害する内容を含む場合
  • 企業や商品の宣伝、販売促進を主な目的とする場合
  • 選挙運動またはこれらに類似する内容を含む場合
  • 特定の団体を宣伝することを主な目的とする場合
  • 事実に反した情報を公開している場合
  • 公序良俗、法令に反した内容の情報を含む場合
  • 個人情報を書き込んだ場合(たとえ匿名であっても関係者が見れば内容を特定できるような、個人情報=氏名・住所・電話番号・職業・メールアドレスなど=を含みます)
  • メールアドレス、他のサイトへリンクがある場合
  • その他、編集スタッフが不適切と判断した場合

編集方針に同意する方のみ投稿ができます。

以上、あらかじめ、ご了承ください。

最新記事