メディカルトリビューン
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2型糖尿病は致死的な心血管リスク高い
スペインの地中海地方(カタルーニャ地方)における約37万人の電子カルテデータを解析した大規模横断研究で、2型糖尿病患者の93%は10年以内の致死的な心血管イベントリスクが高いことが分かった。スペイン・Institut Catala de la Salut(ICS)のManel Mata-Cases氏らが Eur J Prev Cardiol(2020年11月13日オンライン版) のResearch Letterで報告した。
カタルーニャ地方初の大規模研究
ICSはカタルーニャ地方のプライマリケア286施設を統括しており、同地方で使用されている電子カルテシステム(e-CAP)の情報を SIDIAP※ というデータベースに匿名で集積している。SIDIAPは同地方の人口の74%に相当する患者データを有しており、今回はそのうち2016年12月31日までに2型糖尿病と診断された18歳以上の患者37万3,185例のデータを抽出。欧州心臓病学会(ESC)の『糖尿病および心血管疾患ガイドライン』( Eur Heart J 2020;41:255-323 )のリスク分類を用いて、致死的心筋梗塞または脳卒中の10年発症リスクを算出した(超高リスク者:心血管死の10年リスクが10%超、高リスク者:同5%以上10%未満、中等度リスク者:同5%未満)。Mata-Cases氏らは「今回の研究は、われわれが知る限り、地中海地方の状況を初めて明らかにしたものだ」と説明している。
対象の平均年齢は70.1±12.3歳で、女性が45.2%、高血圧が72%、肥満が45%、脂質異常症が60%、現喫煙者が14%であった。半数超(53.4%、95%CI 53.1~53.6%)が超高リスク群に分類され、男性(55.6%、95%CI 55.3~55.9%)の方が女性(50.7%、95%CI 50.3~51.0%)よりも高かった。高リスク群も39.6%に上り、中等度リスク群はわずか7%であった。
2型糖尿病は冠動脈疾患に匹敵するリスク
超高リスク群の50%には、冠動脈疾患、脳卒中、末梢動脈疾患、心不全などの心血管疾患(CVD)の既往がなかった。この割合は、女性でより高かった(55.9%)。CVDの既往は全体の約4分の1(26.7%、95%CI 26.4~26.9%)で認められた。
2型糖尿病患者の92.95%(95%CI 92.87~93.04%)が致死的心血管イベントの超高リスク群か高リスク群に分類され、CVD既往がない患者の36.4%(95%CI 36.1~36.7%)が超高リスク群であったことから、Mata-Cases氏らは「2型糖尿病の罹患は”冠動脈疾患に匹敵する”リスクと見なすべきである」と指摘している。
同氏は「ほとんどの患者で10年以内の致死的イベントリスクが高いことが最も衝撃的であった。超高リスク群の半数は心疾患の既往がなかったため、心筋梗塞や脳卒中予防目的での薬物治療を受けていなかったのではないか」と考察。「中欧や北欧、米国と比べて伝統的に心血管リスクが低い地中海地方でこうした結果が得られたことは懸念すべきである」と付言している。
また、「この結果はプライマリケアで管理されている2型糖尿病患者に対して心筋梗塞と脳卒中の予防行動を起こす必要性を示している。プライマリケアでの総合的ケア導入を加速すべき」とし、「CVD予防には血糖や血清コレステロール、血圧の管理に健康的な行動を組み合わせることが不可欠である。プライマリケアの医師と看護師は、患者の性格や好みに合わせ治療目標を立てるべきであろう」と結論している。(小路浩史)
※ Sistema de Informacion para el desarrollo de la Investigacion en Atencion Primaria
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