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Dr.高野の「腫瘍内科医になんでも聞いてみよう」

医療・健康・介護のコラム

術後化学療法を終えましたが、再発が不安です。何かできることはないでしょうか

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イラスト:さかいゆは

 乳がん、胃がん、大腸がん、肺がんなどでは、手術でがんを取り切ったあとに、抗がん剤を投与する「術後化学療法」を行うことがあります。

遠隔転移を防ぐための「術後化学療法」

 検査で確認できる病変が、最初にできたしこり(原発巣)と、周辺のリンパ節にとどまっている場合は、「切除可能」ということになり、根治を目指して手術を行いますが、手術をした後も、検査では確認できないような、目には見えないがん細胞が体を巡っている可能性があり、これが種となって、遠隔転移(再発)が生じると考えられています。全身に広がっているかもしれないがん細胞を抑え、再発を防ぐために行うのが「術後化学療法」です。

 再発の可能性や、術後化学療法の効果は、状況によって様々ですが、患者さんは化学療法を受ける前に、「化学療法を行わない場合の再発率は30%くらい。化学療法を受けた場合は、それを20%くらいに下げられます」というような説明を受けます。化学療法によって再発を免れる方がいる一方で、化学療法を受けても再発する方もいます。

 がんの種類や状況によって標準治療が決まっていますが、点滴の抗がん剤を3~6か月、あるいは、飲み薬の抗がん剤を6~12か月、というのが一般的です。

化学療法からの「卒業」はひとつの区切り

 化学療法には、脱毛、吐き気、手足のしびれなどの副作用があり、つらい思いをしながら治療を受けますので、予定された期間の治療を終えるというのは、達成感もあり、ホッとするところです。

 脱毛や手足のしびれや皮膚・爪の変化などはしばらく残ることもありますので、そのケアは続きますが、術後化学療法をやり遂げるというのは、一つの区切りとなります。「卒業」という表現を使うこともあります。

 「これで化学療法も卒業ですね。副作用もつらかったと思いますが、よく頑張りました。お疲れさまでした」

 でも、卒業して副作用が抜けても、気分が晴れないという方がおられます。

 「化学療法中は、副作用を乗り切るためにいろいろと工夫を重ねて、早く化学療法が終わってほしいと願っていましたが、いざやり遂げてみると、再発の不安がのしかかってきました。

  治療を受けているときは、再発予防のために取り組んでいる実感があり、そもそも、不安を感じる余裕もなかったのですが、治療を終えてからは、再発のことばかり考えてしまいます。何かできることはないでしょうか」

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高野 利実 (たかの・としみ)

 がん研有明病院 院長補佐・乳腺内科部長
 1972年東京生まれ。98年、東京大学医学部卒業。腫瘍内科医を志し、同大附属病院や国立がんセンター中央病院などで経験を積んだ。2005年、東京共済病院に腫瘍内科を開設。08年、帝京大学医学部附属病院腫瘍内科開設に伴い講師として赴任。10年、虎の門病院臨床腫瘍科に部長として赴任し、3つ目の「腫瘍内科」を立ち上げた。この間、様々ながんの診療や臨床研究に取り組むとともに、多くの腫瘍内科医を育成した。20年、がん研有明病院に乳腺内科部長として赴任し、21年には院長補佐となり、新たなチャレンジを続けている。西日本がん研究機構(WJOG)乳腺委員長も務め、乳がんに関する全国規模の臨床試験や医師主導治験に取り組んでいる。著書に、「がんとともに、自分らしく生きる―希望をもって、がんと向き合う『HBM』のすすめ―」(きずな出版)や、「気持ちがラクになる がんとの向き合い方」(ビジネス社)がある。

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