田村専門委員の「まるごと医療」
医療・健康・介護のコラム
肥満症治療で胃を小さく 口から入れた内視鏡で内側から縫合する手術に成功
BMI32以上を対象に実施
炭山教授は同クリニック留学時に、この治療に用いられる内視鏡縫合器の開発に携わってきた。動物モデルによるトレーニングなどを重ねてきた。
同大での1例目の手術は、11月17日、同クリニックなどと中継で結んで実施された。患者は30歳代の男性でBMIは34、2型糖尿病で軽度腎障害、高血圧の持病がある。術後の経過は良好で、すでに減量効果が見られ、血圧も正常範囲に改善しているという。
同大の特定臨床研究は、日本人に対する治療の安全性のほか、減量効果、高血圧や糖尿病などの改善効果をみるのが目的。対象は、20歳以上60歳未満で、BMIが32以上、糖尿病(境界型を含む)、高血圧症、脂質異常症、肝障害、閉塞性睡眠時無呼吸症候群のどれか一つ以上を合併している患者。同大の外科肥満治療外来に3か月以上の通院歴があるほか、胃がんの原因であるピロリ菌の感染や既往がないこと、内視鏡検査で慢性萎縮(いしゅく)性胃炎がみられないなどの条件がある。術後は6か月間の追跡調査を行う。
日本人にこそ必要な選択肢として
同大の特定臨床研究は、治療に用いられる内視鏡縫合器メーカーの助成を受けて行われる。自費診療で患者負担は、術前検査が7万円、5日間の入院を含む手術費用が約80万円、術後の通院は7回分で25万円、総額約112万円かかる。
炭山教授によると、欧米での研究で減量効果は外科手術よりもやや劣るものの、半年で体重の15から20%の減量が可能と報告されている。一方、合併症のリスクは少ないのが特徴としている。炭山教授は「日本では、欧米に比べ現在の外科治療の適応となるような高度肥満の人は少ないが、糖尿病や高血圧などメタボ関連疾患を発症する人は多い。このため、日本人にこそ内視鏡的な肥満症治療の選択肢が必要ではないかと考えている」としている。(田村良彦 読売新聞専門委員)
※図、写真はいずれも慈恵医大提供
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