精子から見た不妊治療
妊娠・育児・性の悩み
亜鉛、アルギニン、コエンザイムQ10…精子サプリの効果は?
精子に関わるイメージがあるからといって…
実は、ここで紹介した亜鉛とアルギニンは、医師が治療に用いる「医療用医薬品」としても正式に認可されており、その購入には処方箋が必要です。亜鉛はウィルソン病、低亜鉛血症、アルギニンは先天性尿素サイクル異常症、高アンモニア血症の治療に用います。
Q10は以前、うっ血性心不全の治療に用いましたが、医薬品としての効果を実証できず、食品に区分が変更されました。それを機に、たくさんのサプリメントが発売されるようになりました。
もう一度、精子形成を考えてみましょう。重要なことは、精子(細胞)を造るのに必要な数百、数千種類の物質が、血流により過不足なく精巣に運ばれることです。いわば、体全体で精子の形成を支えているといっても過言ではありません。「健全な肉体が、精巣を支えている」のであり、食事を含めてバランスのとれた生活が基礎になります。数千年前の「 以形補形 」の延長線上で、精子や前立腺に関連するイメージがある物質を一つか二つ摂取すれば、造精機能を改善できると考えるのは短慮です。特に、「遺伝子の問題」が背景にある、重症の造精機能障害は、サプリメントでどうにかなる問題ではありません。
造精機能が十分なら環境負荷をものともせず
では、何を食べ、どのように生活したら良いのでしょう? 例えば、北極圏は寒くて農業はできないので、穀物、野菜を得ることはできません。伝統的なイヌイットは、狩猟によって得た生肉が食生活の中心でした。一方、インドには、動物性の食物は乳製品のみという菜食主義者がいます。両者の食生活は極端に異なりますが、どちらかが不妊という話は聞きません。
日本も太平洋戦争直後は食糧難で、栄養失調の人が多く、喫煙率も高く、ニコチン、タール含量が多いタバコを吸うなど、人々は環境からの負荷が高い生活をしていました。それでも出生率は極めて高く、当時の産婦人科のメインテーマは産児制限でした。
造精機能に十分な余力がある方は、多少の環境負荷ではびくともしません。繰り返しになりますが、精子を造る製造ラインの一部のみが機能している方については、貴重な精細管を守るためにも体に負担をかけない生活をお願いします。(東京歯科大学市川総合病院・精子研究チーム)
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