認知症になった認知症専門医が家族と歩んだ3年間……長谷川和夫さん長女・南高まりさん
インタビューズ
認知症になった認知症専門医・長谷川和夫さん 認知症700万人時代へのメッセージ…長女・南高まりさんに聞く
認知症医療の第一人者として知られる医師の長谷川和夫さんは、2017年秋、自身が認知症になったことを公表しました。この3年間、長谷川さんは執筆などの活動を続け、4冊目の著書がまもなく出版される予定です。認知症の人が700万人になろうとしている時代に、認知症になった認知症の専門家は、どんなメッセージを送ろうとしているのでしょうか? コロナ禍で外出を控えている長谷川さんに代わって、長女の南高まりさんがお話を聞かせてくださいました。長谷川さん自身の言葉とともに紹介します。(ヨミドクター 飯田祐子)
※ ” “ 内の文章は、長谷川さんの発言(「認知症でも心は豊かに生きている~認知症になった認知症専門医 長谷川和夫100の言葉~」(中央法規出版)から)
”年を取れば取るほど、認知症になる確率は上がります。認知症の予防を研究してきた私でもなるくらいです。(中略)人間誰しも老いていくのと同じで、自然の摂理なのです“
――長谷川さんは、診断を受ける前から「自分は認知症だ」とわかっていたようですね。
物忘れが激しくなり、講演などで話している最中に、何の話をしているのかわからなくなる……といったこともありましたから。精神科医である私の弟には、「最近、ときどき物忘れがあるから、認知症の薬を飲みたい」と言っていたそうです。
実は私たちも、父が忘れっぽくなってきたことには、何となく気づいていました。本人も周りも、「そういう年齢だし、しょうがないね」と、自然に受け入れたように思います。
――診断は「嗜銀顆粒性認知症」でした。これまで認知症の取材をしてきて、恥ずかしながら初めて聞きました。
父も、最初はアルツハイマーだと思っていたようです。
3年前のある日、父が講演の中で認知症になったことを初めて皆さんに明かしたところ、記者の方から取材の申し込みを受けたのです。「記事になるのなら、改めて調べた方がいい」という父自身の判断で、専門病院で検査を受けた結果、嗜銀顆粒性認知症とわかりました。
<嗜銀顆粒性認知症> 脳の神経細胞に異常なたんぱく質(嗜銀顆粒)がたまり、発症する。症状は、物忘れのほか、妄想、頑固になる、怒りっぽくなるなど。比較的、進行が遅く、アルツハイマー型認知症より高い年齢で発症する傾向がある。
1 / 4
【関連記事】
※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。
※個人情報は書き込まないでください。