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2体のロボットが褒めることで運動技能向上 リハビリの支援システム開発に貢献

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 他人からの賞賛(褒め)としての社会的報酬は、感情・身体にポジティブな変化を促進する。筑波大学システム情報系の飯尾尊優氏らは、ヒトは人間だけでなく、人工的な存在であるエージェント(ロボットやCGキャラクターなど)から褒められても運動技能を習得できると報告した( PLoS One2020;15:e0240622 )。

1体よりも2体からの褒めが運動技能を有意に向上

2体のロボットが褒めることで運動技能向上 リハビリの支援システム開発に貢献

※画像はイメージです

 近年、ヒトと人工的なエージェントとのコミュニケーションに関する研究が数多く行われている。エージェントがヒトを褒めることで、親しみを感じたり( Intern J Human-Computer Studies 2004;61:237-258 )、自己肯定感が高まったりする( Comput Human Behav 2011;27:1643-1650 )との結果が示されてきた。一方、エージェントからの褒めがヒトの運動技能の取得にどのような効果をもたらすかは、これまで明らかにされていない。

 そこで飯尾氏らは<1>エージェント(ロボットとCGキャラクターの両方)からの褒めは運動技能の習得を向上させるか<2>エージェントの数によって褒めの効果は変化するか<3>ロボットとCGキャラクターで褒めの効果は異なるか―について検討した。

 対象は大学生96人(平均年齢21.2±1.37歳男性48人、女性48人)。連続的な指の動かし方(30秒間にキーボードを特定の順番でできるだけ早くタイピングする)を覚えてもらう実験を、以下の6つのグループに分けて行った。

 「1体・褒めなし」の条件〔グループ1(ロボット)と4(CGキャラクター)〕では、エージェントはトレーニング中にトレーニングの残り時間や途中のスコアに関する客観的な数値を発話した(ニュートラル発話)。「1体・褒めあり」の条件〔グループ2(ロボット)と5(CGキャラクター)〕では、一部のニュートラル発話を褒める発話に変更した。例えば、「頑張って偉いね」や「正確にタイピングできるようになってきたね」といった発話。「2体・褒めあり」の条件〔グループ3(ロボット)と6(CGキャラクター)〕では、褒める発話の量と内容は「1体・褒めあり」の条件と同じで、その発話を2体のエージェントに交互に発話させた (図1)

図1.参加者のグループ分けとエージェントの発話内容の例

2体のロボットが褒めることで運動技能向上 リハビリの支援システム開発に貢献

 参加者は実験の翌日に前日に覚えたタイピングを再度実行してもらい、指の動かし方のパフォーマンス(どれだけ早く正確にタイピングできたか)を測定した結果、以下のことが判明した。

  • エージェントからの褒めがないグループ(1、4)よりも褒めがあるグループ(2、3、5、6)で、実験翌日の指運動のパフォーマンスが有意に向上した(P<0.05、 図2 )。
  • エージェントの数が1体のグループ(2、5)よりも2体のグループ(3、6)の方が、パフォーマンスが有意に向上した(P<0.05)。
  • エージェントの種類がロボットのグループ(2、3)とCGキャラクターのグループ(5、6)で、パフォーマンスに差は認められなかった。

図2.褒めの態様と運動技能の習得度

2体のロボットが褒めることで運動技能向上 リハビリの支援システム開発に貢献

(図1、2ともPLoS One2020; 15: e0240622

褒めの質や量よりも多くの”他者”からの褒めが有用

 飯尾氏は「物理的か仮想的かにかかわらず、”身体性”を持ったエージェントからの褒めが、運動技能習得能力の向上に効果があることを示したのは意義深い」と指摘。褒めの総量は同等でも、エージェントの数が1体よりも2体の場合の方が褒めによる効果が高かった点については、「褒めは、質や量よりも、多くの”他者”に認められることが重要である可能性を示唆している」と考察している。

 その上で同氏は、研究の成果が医療リハビリテーション支援、福祉分野における介護・療育支援、教育分野における学習支援など、他者と関わることでヒトの行動変容を支援するエージェントシステムの開発に貢献することに期待を示している。(内田 浩)

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