佐藤純の「病は天気から」
医療・健康・介護のコラム
低気圧が近づくと頭や首・肩が痛くなる…天気の変化を感じるのは「耳」だった
頭痛や首・肩の痛みなどの天気痛は、多くの場合、低気圧、前線、台風などが近づいてきた時、あるいは高気圧が過ぎ去っていく時にみられます。そのことから、これらの気象変化でみられる「気圧の変化」が、天気痛のきっかけになっていると考えられます。先回のコラムで、天気痛のメカニズムには、身体の機能を調節している「自律神経」のストレス反応が関わっているというお話をしました。今回は、もう一つの重要なメカニズムである「気圧の変化を感じ取る仕組み」についてお話ししようと思います。
膨張したり収縮したりする人体
私たちは地球上で生活していますので、つねに体の周りから空気の圧力(大気圧)を受けています。私たちの体の表面積は、男性で1.6平方メートル、女性で1.4平方メートル程度です。1平方メートルあたりにかかる気圧は約10トンですから、男性は16トン、女性は14トンの圧力を受けているわけです。
体にかかるこの大きな圧力は、気圧や気温の変化に伴ってゆらゆらと変わります。さらに体は、天体の引力や遠心力によって引っ張られてもいます。私たちは、自分の体の形は一定だと思っていますが、短いスパンで膨張したり収縮したりを繰り返しているのです。
変形するのは体の表面だけではありません。体の中にある気体や液体も、同時に膨張、収縮します。気体や液体が満たされているところといえば、肺や血管をまず思い浮かべますが、これらの臓器はもともと呼吸や心臓の拍動によって圧力が大きく変わっているため、天気が変わることで起きる小さな変化を感じ取る仕組みが存在するかは疑問です。そうすると、他に考えられる場所として、耳が候補としてあげられます。
鳥類の耳には気圧を感じる器官が
鳥類の耳には、気圧を感じる器官が存在することが分かっています。鳥の耳にも私たちと同じように鼓膜がありますが、この鼓膜に接する形で「傍鼓膜器官」とよばれる場所があります。この器官は鼓膜とつながっていて、気圧の変化に伴う鼓膜のわずかな動きが器官内部の液体に伝わり、それを感覚細胞が検知して脳に神経信号を伝えると言われています。彼らはこの能力を使って、自分の飛んでいる高度を知り、雨が降るかどうかなどの気象変化を予見し、行動していると考えられています。
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