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新・のぶさんのペイシェント・カフェ 鈴木信行

医療・健康・介護のコラム

徐々に弱っていく体 病気が前向き思考にしてくれたその訳は

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同じ病気の母から受け継いだ笑顔

 「私の場合は、遺伝性なんですよ」

 脊髄小脳変性症にはいろいろなタイプがあり、約3分の1が遺伝性なのだという。

 彼は、いまから20年ほど前、徐々に歩けなくなり言葉の発音が悪くなってくるなどの症状が表れた母親に対し、冷たく当たってしまったのだという。それが、自分自身も12年前に同じ病気との診断を受けた。目や手足が震えたり、体温調整が難しくなったり、歩きにくくなったり、症状が顕著になった今となっては、当時のことを後悔していると、口にした。

「病気は遺伝したけれど、笑顔も遺伝したと思っています」

 お母様は病気になりながらも笑顔が多かった人のようだ。彼もまた笑顔を絶やさない。病気以上に、もっとすてきなところをたくさん親からもらったということだろう。

病気になったことで前向き思考に

 「この病気を発症したことで、かえって考え方も前向きに、そして本当にいろいろなことにチャレンジするように変わりましたよね」

 私は、発症前の彼を知らない。

 発症時はタンクローリーのドライバーなどをしていたのだが、リスクもあるので転職することに。この転職活動の面接時に、開き直って、症状はなるようになると本音を伝えたら採用された。それがきっかけの一つとなって、病気への考え方が前向きになったという。

 住宅のメンテナンスなどの仕事をしていたことがあるらしい。結婚していた時期もあり、お子さんもいるのだ。

 私が知る彼は、いつも何かにチャレンジし続けるたくましい姿だ。過去の仕事の経験を生かし、発症後に勉強し直して、宅地建物取引士の資格を取った。サーフィン、パラグライダーと、アウトドアスポーツを楽しみ、そして、なによりすごいのは水泳競技での活躍だ。

日本パラ水泳選手権大会に連続出場

 彼は、発症してから、体力保持のためにスイミングクラブに入った。プールへ行くと、体の状態から着替えるだけでも大変そうな人や、目が見えないのにコースを外れずに泳ぐ人など、様々な障害を持った人を目にした。しかし、みなが堂々と自分の体を生かして水泳を楽しむ姿があった。その力強さを感じるとともに、その時点ではまだ五体満足と言えた自分に対して涙が出てきたと言う。

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日本パラ水泳選手権大会に連続出場中 写真は佐久間さん提供

 その後、彼は次々に記録を出していく。水泳を始めて数年後には、全国規模の大会に出場できるほどになった。いまは、日本パラ水泳選手権大会の連続出場記録を持っており、更新中だ。今年は、新型コロナウイルス蔓延(まんえん)防止に伴い大会が中止になって、更新記録を伸ばせなかったが、来年が楽しみだ。

 「いまは私も、プールサイドへ行くだけで大変なんですよ」

 足の力が弱くなってきたいまとなっては、更衣室で着替えるだけで、時間も体力も使うそうだ。

 楽しくお話をしていると時間が過ぎるのは早い。私が入れたコーヒーはすっかり冷めてしまった。(鈴木信行 患医ねっと代表)

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鈴木信行(すずき・のぶゆき)

患医ねっと代表。1969年、神奈川県生まれ。生まれつき二分脊椎の障害があり、20歳で精巣がんを発症、24歳で再発(寛解)。46歳の時には甲状腺がんを発症した。第一製薬(現・第一三共)の研究所に13年間勤務した後、退職。2011年に患医ねっとを設立し、より良い医療の実現を目指して患者と医療者をつなぐ活動に取り組んでいる。著書に「医者・病院・薬局 失敗しない選び方・考え方」(さくら舎)など。


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