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山中龍宏「子どもを守る」

医療・健康・介護のコラム

2歳女児の首に絡まったシートベルト 外そうとするとロック機能で逆に締まり窒息

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 これまで、気道にものが入ることで起きる 誤嚥(ごえん) 、窒息についてお話ししましたが、今回は、首が絞められて窒息する場合についてお話ししてみたいと思います。

2歳女児の首に絡まったシートベルト 外そうとするとロック機能で逆に締まり窒息

イラスト:高橋まや

カーテンのタッセル、ブラインドのコード…

 ひもやベルトはわれわれの身の回りにたくさんあります。人々の生活上、なくてはならないものですが、時に危険な存在にもなります。ひもやベルトで窒息する例は、3歳までに多くみられます。これまでに報告されている事故例を挙げてみましょう。

  事例1 :3歳男児。2002年1月、新潟県の幼稚園の遊戯室で、プラスチックの円筒形の缶にビニールひもを取りつけ、竹馬のようにして遊ぶ「缶ぽっくり」を使っていたところ、ひもが首にからまり、約4時間後に死亡した。

  事例2 :2歳3か月女児。08年11月、走行中の自動車の後部座席で、5歳の兄とともにシートベルトで遊んでいたところ、女児の首にシートベルトがきつくからまり、窒息した。すぐに停車し、ベルトを外そうとしたが、ロック機構のために緩まず、逆に締まっていくため、近くの店ではさみを借り、ベルトを切って外した。顔面はうっ血して意識障害があり、9日間入院した。( 国民生活センターが同様の複数例を報告

  事例3 :1歳1か月男児。12年7月、歩き始めの子どもの首に、カーテンの留めひも(タッセル)がかかって首つり状態となっているのを母親が発見した。タッセルの下端は、床から50センチの高さにあった。母親が発見したときには呼吸はなく、ドクターヘリで搬送され、1か月間入院した。

  事例4 :6か月男児。12年11月、大人用ベッドで寝ていた。ベッドは窓の脇に設置され、高さは40センチだった。窓にはブラインドがあり、2本のコードがベッド脇に垂れ下がっていた。1本は床につき、もう1本のコードは床から22センチの高さまで垂れ下がっていた。男児が寝返りをうってベッドから落ちた時、ベッド脇にあったブラインドのコードが子どもの首に食い込み、床の上で心肺停止の状態で発見された。

 事例4と同じような事例は、 日本小児科学会Injury Alert No.36 類似事例2 、東京都の「 ブラインド等のひもの事故に気を付けて! 」でも報告されています。

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山中 龍宏(やまなか・たつひろ)

 小児科医歴45年。1985年9月、プールの排水口に吸い込まれた中学2年女児を看取みとったことから事故予防に取り組み始めた。現在、緑園こどもクリニック(横浜市泉区)院長。NPO法人Safe Kids Japan理事長。キッズデザイン賞副審査委員長、こども家庭庁教育・保育施設等における重大事故防止策を考える有識者会議委員も務める。

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