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医療・健康・介護のコラム

脚の痛み(7)手術法 軟骨の状態で選択

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  このシリーズでは、関節外科が専門で関西労災病院(兵庫県尼崎市)副院長の津田隆之さんに聞きます。(聞き手・長尾尚実)

脚の痛み(7)手術法 軟骨の状態で選択

 変形性膝関節症の治療には保存治療と手術があります。保存治療では、鎮痛薬の投与や患部へのヒアルロン酸の注射のほか、筋肉のストレッチなどのリハビリ、靴の底に入れる 足底板そくていばん などの装具で痛みを緩和します。足底板は、O脚やX脚が悪化している人の脚の骨格を正常に支え、膝の一部だけに負担がかかるのを防ぎます。

 しかし、保存治療で改善が見られないケースも多く、▽歩くと膝が痛い▽階段の上り下りが難しい▽日常生活が不自由――といった状態が長く続く患者さんには手術を検討します。その際に注意が必要なのは、 大腿骨だいたいこつ脛骨けいこつ の間にどれだけ軟骨が残っているかです。

 すり減っている軟骨が膝関節の内側か外側のどちらか一方の場合は「高位脛骨骨切り術」を選べます。脛骨の上部を一部切り取って関節の角度を調整し、膝関節の内側と外側にかかる負担を均等にします。3~4週間の入院が必要ですが、自分の関節を温存できるため、手術後の違和感が少ないという利点があります。

 軟骨全体がすり減っていれば、人工膝関節置換術を行います。傷んだ軟骨の表面を削り取り、合金や樹脂でできた人工関節を入れて固定します。術後1~2日でリハビリを始め、3週間程度で退院できます。痛みはほぼ消え、日常生活を送るうちに違和感もなくなります。人工関節は約20年で交換が必要になる場合もあります。

 軽度のO脚などの場合は、膝関節の内側だけを人工関節にする治療法も開発されています。手術による体への負担は小さいものの、病状が進んでいると適用できません。自分の体格や年齢、ライフスタイルに合った治療法を医師と相談して決めましょう。

津田隆之さん

【略歴】
 津田 隆之(つだ・たかゆき)
 三重県多気町出身。1982年、大阪大医学部卒、90年、同大学院修了。星ヶ丘厚生年金病院(現・JCHO星ヶ丘医療センター)整形外科部長、箕面市立病院医務局次長などを経て、2017年4月から現職。専門は関節外科、骨粗しょう症の疫学。市民向け講演会などで、脚の痛みを起こす病気や治療法、転倒予防について解説している。

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