精子から見た不妊治療
医療・健康・介護のコラム
精巣にいいのはブリーフよりもトランクス?
陰のうが股の間にブラブラと下がっているのには意味があります。精巣を体温より2~3度低く保つことが、精子を作るのに大変重要だからです。「実験的停留精巣」という研究で、ネズミの精巣を手術でお 腹 の中に入れてしまうと、数週間から数か月で 萎縮 し、造精機能を失います。
「夫にはトランクスをはかせています」
不妊治療を受けているご夫婦は、精巣と温度の関係をよくご存じで、「夫には風通しの良いトランクスをはかせています」などとお話しされます。
エコノミークラス症候群をご存じでしょうか。飛行機のエコノミークラスで長く同じ姿勢で座っていると、足の静脈で血の流れが悪くなり、血のかたまり(血栓)ができやすくなります。それが肺に詰まって肺 塞栓 などを誘発する恐れがあるので、こまめに足を動かしましょう、という話です。
ある労災病院の先生から伺った話ですが、脊髄を損傷して下半身不随になった男性は、ずっと車いすで過ごし、足を動かすこともできないため、「車いす・エコノミークラス症候群」という深刻な問題に直面します。
脊髄損傷で勃起できなくなっても、現在は手術で精巣から精子を採取する方法があるので、下半身不随の方でもお子さんを望めます。その先生から、「膝をぴったりつけて、何年も車いすに座っていると、股間が蒸れて精巣の温度が上がってしまい、造精機能に悪影響があるか」と、質問されました。
家畜の夏季不妊症
温度と不妊の関係は、家畜では詳しく調べられています。ウシ、ヒツジ、ブタなどは、高温多湿な夏季に一時的に造精機能が減退し、妊娠率が低下する夏季不妊症が知られています。その原因として、陰のうの温度の上昇が指摘されています。発生を防止するには、畜舎の冷房が効果的ですが、費用的に難しく、陰のうにミストを吹きかけて冷却する試みなどもなされています。ここで重要なのは、暑い季節が過ぎれば造精機能は回復することです。
「サウナ=高温=精巣に悪影響」と思っている方も多いことでしょう。でもサウナの場合、すぐに全身の血管が広がって血行が促進され、発汗によって体温上昇が抑えられるので心配はいりません。サウナが盛んな北欧に造精機能障害の方が多い、という話も聞いたことがありません。
ただ、お子さんを望む下半身不随の方は、精巣の存在を意識した日常生活が必要かもしれません。
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