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Dr.高野の「腫瘍内科医になんでも聞いてみよう」

医療・健康・介護のコラム

がん患者も運動した方がいいのでしょうか?

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がん患者も運動した方がいいのでしょうか?

イラスト さかいゆは

 がん患者さんから、運動についての質問をよく受けます。

 「がんがあっても、治療中でも、運動してよいのでしょうか?」

 「運動した方が、がんの再発予防になるのでしょうか?」

 「運動しなければいけませんか?」

 がん患者さんの病状や体調もいろいろですし、運動への考え方もいろいろですので、一律にこうすべき、という答えはありません。

 「運動してもいいですか?」なのか、「運動しないとダメですか?」なのか、質問のしかたにも気持ちは表れていますが、私は、そんな気持ちもくみ取りながら、こう答えます。

気分よく過ごすことが一番

 気分よく過ごすことが一番です。楽しく運動できて、運動後の疲労も心地よく感じられるなら、好きなだけ体を動かすといいと思いますよ。

 でも、体を動かすのもしんどくて、ぐったりしてしまうようだったら無理はしない方がいいでしょう。そもそも、体を動かすのに医者の許可なんていらないので、私に聞くよりも、むしろ、自分の体の声に耳を傾ける方がいいかもしれませんね。

 運動好きの方であれば、どんな運動をしたいのかお伺いして、スポーツ談議になったりします。ちなみに、私は、学生時代はボート部で激しく運動していましたが、今は、通勤の自転車でも息を切らしているくらいです。

ほどよい運動は「体によい」 厚労省も推奨

 なお、通勤など、日常生活上の体の動きを「生活活動」、日常生活以外のスポーツなどを「運動」と呼び、この二つをあわせて「身体活動」と呼ぶのが、厚生労働省の定義です。 「健康づくりのための身体活動基準2013」では、18~64歳の方に、歩行またはそれと同程度以上の「身体活動」を毎日60分、息が弾み汗をかく程度の「運動」を毎週60分行うことを推奨しています。

 身体活動を増やすことによって、心血管疾患や糖尿病などの生活習慣病を減らせるほか、がんになるリスクも、わずかながら減らせる可能性が示唆されています。ほどよく体を動かすことは、確かに、「体によい」ようです。

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高野 利実 (たかの・としみ)

 がん研有明病院 院長補佐・乳腺内科部長
 1972年東京生まれ。98年、東京大学医学部卒業。腫瘍内科医を志し、同大附属病院や国立がんセンター中央病院などで経験を積んだ。2005年、東京共済病院に腫瘍内科を開設。08年、帝京大学医学部附属病院腫瘍内科開設に伴い講師として赴任。10年、虎の門病院臨床腫瘍科に部長として赴任し、3つ目の「腫瘍内科」を立ち上げた。この間、様々ながんの診療や臨床研究に取り組むとともに、多くの腫瘍内科医を育成した。20年、がん研有明病院に乳腺内科部長として赴任し、21年には院長補佐となり、新たなチャレンジを続けている。西日本がん研究機構(WJOG)乳腺委員長も務め、乳がんに関する全国規模の臨床試験や医師主導治験に取り組んでいる。著書に、「がんとともに、自分らしく生きる―希望をもって、がんと向き合う『HBM』のすすめ―」(きずな出版)や、「気持ちがラクになる がんとの向き合い方」(ビジネス社)がある。

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