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Dr.高野の「腫瘍内科医になんでも聞いてみよう」

医療・健康・介護のコラム

がん患者も運動した方がいいのでしょうか?

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がんサバイバーも身体活動で体力向上、QOL改善

 がんを経験した方を、「がんサバイバー」と呼びますが、がんサバイバーに対して、身体活動が勧められるのかどうかについても、数多くの研究が行われています。

 現在、国立がん研究センターの研究班で、「がんサバイバーシップガイドライン」の作成が進められていて、その第1弾となる「身体活動編」が、2021年に公表予定です。私もこの研究班の一員としてガイドラインづくりに携わっているのですが、研究班で、身体活動に関する世界中の論文を検索したところ、がん治療を終えたがんサバイバーを、「身体活動を促進する群」と「特別な介入をしない群」にランダムに振り分け、生活の質(QOL)や体力を比較した研究(ランダム化比較試験)が、約400件あることがわかりました。

 もっと少ない数を予想していましたので、このテーマの研究がこれほど活発に行われているというのは驚きでした。10人のメンバーで400以上の論文を読んで、客観的に評価を行い、結果の統合解析を行って、身体活動に関する推奨をまとめているところです。正式な発表は来年となりますが、身体活動を促進することで、体力が向上し、QOLが改善する傾向がみられていて、がんサバイバーの身体活動を考える際の参考になりそうです。

 ただ、身体活動の促進が、がんの再発や生存率に影響するかどうかを調べた研究は少なく、それを評価するのは困難でした。がんのことを気にして無理に体を動かすというのではなく、気分よく過ごすために、ほどよく体を動かすというのが大事かと思います。

 そもそも、運動は強制されてするものではなく、自分の意思で、体調に合わせて、適度に行うべきものです。「運動しなければいけない」と焦る必要はなく、気が向かない時や、体がしんどいときには無理しなくてもよいでしょう。

 今は、新型コロナウイルスの感染対策にも気を付けなければならず、寒さもあって、家にこもりがちの方も多いと思いますので、ちょっとしたきっかけを見つけて、ぶらっと散歩してみてもいいかもしれません。紅葉した木々など、秋の景色を見つけられるはずです。

医者に聞く前に、自分の体の声に耳を傾ける

 がんがあるから、あるいは、抗がん剤治療中だから、運動は控えなければいけない、ということはなく、体調が許すなら、好きな運動をしても大丈夫です。

 骨転移がある方など、病状によっては、痛みが増すような動作や、患部に無理な力が加わるような動作は避けた方がよい場合もありますので、気になるようであれば、担当医にご相談ください。でも、医者に聞くよりも前に、自分の体の声に耳を傾ける方が重要ですね。

 運動でも食事でも、私からのアドバイスはいつも一緒です。

 体にいい(悪い)とか、がんにいい(悪い)という視点で、運動するかしないかを考えたり、食卓を眺めたりするのではなく、運動や食事を純粋に楽しむのがよいと思います。

 心地よく運動し、おいしく食べ、自分らしく過ごすことが大切です。

 がんがあるから、あるいは、治療中だからという理由で、やってはいけない、ということはほとんどありませんので、体調がよければ、今まで通り、なんでも好きなことをやってください。

 「○○してもよいでしょうか?」という質問は、医者に聞くよりも、まず、自分の体に聞くようにしましょう。そして、体がOKと言っているなら、どうぞそれを楽しんでください。(高野利実 がん研有明病院乳腺内科部長)

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高野 利実 (たかの・としみ)

 がん研有明病院 乳腺内科部長
 1972年東京生まれ。98年、東京大学医学部卒業。腫瘍内科医を志し、同大付属病院で研修後、2000年より東京共済病院呼吸器科医員、02年より国立がんセンター中央病院内科レジデントとして経験を積んだ。05年に東京共済病院に戻り、「腫瘍内科」を開設。08年、帝京大学医学部付属病院腫瘍内科開設に伴い講師として赴任。10年、虎の門病院臨床腫瘍科に最年少部長として赴任し、「日本一の腫瘍内科」を目標に掲げた。10年間の虎の門時代は、様々ながんの薬物療法と緩和ケアを行い、幅広く臨床研究に取り組むとともに、多くの若手腫瘍内科医を育成した。20年には、がん研有明病院に乳腺内科部長として赴任し、新たなチャレンジを続けている。西日本がん研究機構(WJOG)乳腺委員長も務め、乳がんに関する全国規模の臨床試験や医師主導治験に取り組んでいる。著書に、かつてのヨミドクターの連載「がんと向き合う ~腫瘍内科医・高野利実の診察室~」をまとめた、「がんとともに、自分らしく生きる―希望をもって、がんと向き合う『HBM』のすすめ―」(きずな出版)がある。

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