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医療・健康・介護のコラム

どうしても解せない言葉「うちの妻が不妊で」 不妊はカップルの問題なのに

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どうしても解せない言葉「うちの妻が不妊で」 不妊はカップルの問題なのに

 先日、気になる出来事がありました。

 9月に入ってから、不妊治療の保険適用の問題が大きくクローズアップされ、私も取材を受ける機会が増え、これまで私の活動をご存じなかった周囲の方から、多くのお声がけをいただいています。その中には「実は私たちも今、不妊治療をしているんです」「実は、これから治療を始める予定で、検査をしてきたばっかりなんです」「実は、なかなか子どもができなくて、治療を受けたほうがいいか、悩んでいたんです」などの、いわゆるカミングアウトのような、相談のようなお話も、よくいただきます。

「妻が不妊治療をしたんですよね」

 その中で、「実は、うちの子も体外受精でできたんですよ」とストレートにおっしゃった方がいました。「おー、『不妊治療でできた』という言葉はよくあるけど、『体外受精でできた』とストレートにこの単語を出す方は多くはない。珍しいなぁ。しかも男性。時代はオープンになったな~」と、心の中でうれしく思ったのですが、それもつかの間、その方の次の言葉が「うちの妻が不妊治療をしたんですよね」だったんです。

 私は思わず聞き返してしまいました。

 「……? 奥様、が……不妊治療を、なさった……んですか?」

 「そうなんですよ。うちの妻が不妊治療をしまして」

 あまりにきっぱりと言い切られるので、私は少し混乱して

 「……あのー、ええっと、奥様だけが、治療をしたわけでは……ない。ですよね。たぶん」

 と質問しましたら、

 「は?  ああ~、まあ、僕も病院には行きましたけど」

 「あ、ですよね~」

 「あ、でも、僕には原因はありませんでしたからね」

 「あ……はぁ。そう……でしたか」

 「なので、妻が不妊治療をしたんです」

 この後はもう深掘りはしなかったのですが、これを聞いてYさんのことを思い出しました。

「俺は問題ないから」と検査を受けない夫

 Yさんは当時34歳。33歳で結婚し、その5か月後には不妊治療を始めたそうです。しかし、半年たってもなかなか妊娠に至りません。そして「タイミング療法では妊娠しない。でも、できれば人工授精はしたくない、どうしたらいいのか……」と悩んでいました。確かに、34歳は若すぎるわけではありませんが、30代半ばだし、少し焦りすぎているように私には見えました。

 そんなに早く子どもが欲しい理由は一体、何なのだろうと聞いてみると、「うちの旦那は再婚で、前の奥さんとの間には子どもがいるんです。だから私も早く子どもが欲しいんです」とのこと。Yさんはそれがあって、一日も早くと、結婚してすぐから自己タイミングで妊娠の機会を待っていたそうです。でも一向にその兆しがないため、不安になって病院に行き、検査を受けて、タイミング療法から治療が始まったのだそうです。

 Yさんによると、通っている病院の医師も、一通りYさんの検査をしてみたけれど特に問題も見つからず、年齢もまだ若いので、人工授精のステップアップをすすめているわけでもないとのこと。ただ、「旦那様の検査もぜひ一度やったほうがいい」とは言われているとのことでした。

 私はちょっと驚いて

「え、まだ旦那様の検査してないんですか?」と聞いたところ、

「旦那は前の奥さんとの間に子どもがいるから『俺は問題ないからいいだろ』と検査をしてくれないんです。私も、それを言われると何も言えなくなってしまって……」と目を伏せます。

 ああ、原因が自分にあると、暗に言われているような気持ちになってしまうのだろうな、とYさんのつらさが伝わってくるような気がしました。そういうケースは、実によくあるのです。

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松本亜樹子(まつもと あきこ)

NPO法人Fine理事長/国際コーチ連盟認定プロフェッショナルサーティファイドコーチ

 長崎市生まれ。不妊経験をきっかけとしてNPO法人Fine(~現在・過去・未来の不妊体験者を支援する会~)を立ち上げ、不妊の環境向上等の自助活動を行なっている。自身は法人の事業に従事しながら、人材育成トレーナー(米国Gallup社認定ストレングス・コーチ、アンガーマネジメントコンサルタント等)、研修講師として活動している。著書に『不妊治療のやめどき』(WAVE出版)など。
Official site:http://coacham.biz/

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