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医療・健康・介護のコラム

どうしても解せない言葉「うちの妻が不妊で」 不妊はカップルの問題なのに

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自己弁護に聞こえる「妻が不妊でね」

どうしても解せない言葉「うちの妻が不妊で」 不妊はカップルの問題なのに

 私が不妊に関係ないコミュニティーで、たまたまFineの活動の話をすると、その後、必ず私に話しかけてきてくれる方がいらっしゃいます。「実はうちも……」の打ち明け話です。そして、それは男性のほうが割合が高いのです。中には「うちも不妊治療をして、やっとできたんですよ」と「We」を主語にして話をしてくださる方もいらっしゃるのですが、なぜか必ず「妻が」と「She」を主語にされる方がいます。

 中には「妻が不妊でね」「うちの妻が不妊症でね」とまでおっしゃる方がいらっしゃいます。言葉を選ばずに言うと、それはあたかも「自分には原因はないんだ」と自己弁護しているかのようにも見えます。一体なぜ、どこから、その意識が生まれるのだろうなぁ、と非常に残念に思うのです。

男性不妊なら、妻は周囲に気を使うのに

 もちろん時には逆もあります。男性に不妊の原因があると明らかになった場合、その妻が「うちは男性不妊で……」と話すときです。しかし、それは多くの場合が「悩みをこっそり打ち明ける」ケースです。しかも「夫の名誉が傷つくから」と非常に周囲に気を使って、でも辛さを自分だけで抱えられなくて、当事者の集まりなどで口にされることが多いのです。随分と違うなぁ、という印象がぬぐえません。

 確かに男性のほうがデリケートで、とか、プライドが高くて、ということは、あるだろうなとは思うのですが、であれば「(男性)不妊は恥ずかしい」とか「不妊は普通と違って劣っている」というその認識自体を、見直すべき時はとうに来ているのではないでしょうか。

渋々検査を受けたら男性不妊が発覚

 ちなみにYさん夫妻はその後、夫が渋々検査を受けたところ、なんと男性不妊が発覚し、「以前の妊娠は奇跡」と医師に言われたそうです。そして数度の人工授精の末、妊娠に至りました。

 このコラムでも何度もお伝えしたと思いますが、不妊の原因がどちらにあろうがなかろうが、「不妊」は「カップル」の問題です。どちらか一人では不妊にはならないのです。どうか、このことを忘れず、お互いが「自分ごと」としてかかわっていただけますように。それで夫婦の関係性は、必ず変わってくると思いますので。二人でたくさん話をしながら、お互いにも、不妊という現状にも、向き合っていただきたいな、と願っています。(松本亜樹子 NPO法人Fine=ファイン=理事長)

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松本 亜樹子(まつもと・あきこ)
NPO法人Fineファウンダー・理事/国際コーチング連盟マスター認定コーチ

松本亜樹子(まつもと あきこ)

 長崎市生まれ。不妊経験をきっかけとしてNPO法人Fine(~現在・過去・未来の不妊体験者を支援する会~)を立ち上げ、不妊の環境向上等の自助活動を行なっている。自身は法人の事業に従事しながら、人材育成トレーナー(米国Gallup社認定ストレングス・コーチ、アンガーマネジメントコンサルタント等)、研修講師として活動している。著書に『不妊治療のやめどき』(WAVE出版)など。
Official site:http://coacham.biz/

野曽原 誉枝(のそはら・やすえ)
NPO法人Fine理事長

 福島県郡山市出身。NECに管理職として勤務しながら6年の不妊治療を経て男児を出産。2013年からNPO法人Fineに参画。14年9月に同法人理事、22年9月に理事長に就任。自らの不妊治療と仕事の両立の実体験をもとに、企業の従業員向け講演や、自治体向けの啓発活動、プレコンセプションケア推進に力を入れている。自身は、法人の事業に従事しながら、産後ドゥーラとして産後ケア活動をしている。

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