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「教えて!ドクター」の健康子育て塾

医療・健康・介護のコラム

座席、視線、睡眠…子どもの「乗り物酔い」を防ぐ5つの工夫 酔い止め薬には注意点も

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乗り物酔いを防ぐ五つのポイント

 乗り物酔いは古来、乗り物に乗る兵士にも関係する症状であったことから研究され,その予防方法などはよく知られています。多くの方も何となくご存じかと思いますが、理由とともにお伝えしていきます。

1)揺れの少ない席を選ぶ……バスなら前、飛行機は翼の上

 頭が揺れることで酔いやすくなることが分かっています。車外前方の景色が見える席では、車の動きを予測して体を預けられるため頭の揺れが減るため酔いにくいです。運転手が車に酔いにくい理由でもあります。助手席も景色が見やすくお勧めです。

 ただ、お子さんの乗車にはチャイルドシートが必要で、助手席のチャイルドシートは衝突事故が起きた場合にエアバッグとの間に挟まれてしまうリスクがあるため危険です。なるべく後方座席に座らせてください。もし、自家用車の移動でルートが選べるのであれば、カーブの多い道は揺れが大きくなるため避けるとよいでしょう。また、より低い位置で頭を背もたれに付けるほど揺れにくいため酔いにくくなります。ヘッドレストの使用も一案です。

 バスに乗るなら、後方座席より前の座席です。これは景色だけでなく、バスの場合には後部にエンジンが搭載されていて揺れがより強いためです。船では中央に近い位置、飛行機なら翼の上だと揺れの中心に近く、揺れが少ないため、酔いやすい場合にはお勧めです。

2)視覚と平衡感覚のズレを減らす……文字を読むのはダメ

 遠くの景色を見ると、酔いにくいことが知られています。これは、遠くの景色を見ることで、頭が揺れても視線を保てるためと考えられています。また、乗り物の中で本を読むと酔いやすくなることも分かっています。これは乗り物の揺れを感じる頭の感覚と、文字を追いかける視線の動きがズレるためです。後部座席で酔いやすい理由でもあります。つまり、後部座席では横の景色を見ていることが多く、体に加速度の加わる方向と視線がズレてしまうためです。

3)体調管理をする……体調不良、睡眠不足、空腹だと酔いやすい

 体調不良や、睡眠不足で疲れていると脳の機能が低下し、普段以上に乗り物酔いが起こりやすくなります。旅行や長距離の移動の前は、しっかりと睡眠を取り体調を整えることが大切です。また、空腹の場合にも起こりやすいことが分かっており、旅立つ前に軽くお (なか) を満たしておくことも大切です。ただし乳製品や炭酸飲料は避けたほうがよいという意見もあります(5)

4)移動中完全に寝てしまうこと

 一番の予防は、これもよく知られていますが、寝てしまうことです。脳の空間把握機能自体がお休みしてしまうため、視覚とのズレも起こらず乗り物酔いも起きようがないためです。

5)小学生以上なら酔い止めの薬を使う

 乗り物酔いの予防に酔い止め薬も選択肢のひとつです。乗り物酔いに抗コリン薬や、鎮静作用のある抗ヒスタミン薬といった薬が効くことが知られています。しかし、これらの薬には眠気や口渇等の副作用があります。市販薬もありますが子どもに飲ませても大丈夫なのでしょうか。

 おなじみの酔い止め薬ですが、いくつか注意点をお伝えします。まず年齢です。何歳から飲ませていいという明確な根拠は見つかりませんでしたが、私個人の意見としては小学生以上の方にお勧めします。理由は次の通りです。

 酔い止めとして効果を発揮する抗ヒスタミン薬は、脳内で鎮静作用をもつ第1世代の抗ヒスタミン薬です。脳内に成分が移行しにくく小児に安全とされる第2世代の抗ヒスタミン薬は乗り物酔いには効果がありません。この第1世代の抗ヒスタミン薬は小児ではけいれんを起こすリスクがあるため、最近は使われなくなってきました。熱性けいれんの既往がある幼児や発熱している場合には特に注意が必要です。熱性けいれんは、おおむね小学校に入る頃になると起きにくくなるので、小学生以降なら酔い止めを飲ませてもいいのではと考えています。もっとも小学生以上でも、風邪薬や抗アレルギー薬を飲んでいる場合には成分がかぶって過量内服となる可能性もありますので注意が必要です。なお、酔い止め薬を飲ませる場合は、乗車30分前くらいに飲ませます。

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坂本昌彦(さかもと・まさひこ)

 佐久総合病院佐久医療センター・小児科医長
 2004年名古屋大学医学部卒。愛知県や福島県で勤務した後、12年、タイ・マヒドン大学で熱帯医学研修。13年、ネパールの病院で小児科医として勤務。14年より現職。専門は小児救急、国際保健(渡航医学)。日本小児科学会、日本小児救急医学会、日本国際保健医療学会、日本国際小児保健学会に所属。日本小児科学会では小児救急委員、健やか親子21委員。小児科学会専門医、熱帯医学ディプロマ。現在は、保護者の啓発と救急外来の負担軽減を目的とした「教えて!ドクター」プロジェクトの責任者を務めている(同プロジェクトは18年度、キッズデザイン協議会会長賞、グッドデザイン賞を受賞)。

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