子どもの健康を考える「子なび」
医療・健康・介護のコラム
皮膚のトラブル(4)水虫菌の仲間 部活通じ流行も
皮膚のトラブルでは、大阪医科大の森脇真一教授(59)に聞きます。(聞き手・東礼奈)
水虫の原因として有名な 白癬 菌の一種、「トリコフィトン・トンズランス」が引き起こす皮膚感染症が、柔道、レスリング、相撲といった格闘技を習う大学生や成人のほか、体を接する機会の多いクラブ活動を通じて中高生に流行することがあります。感染力が強いため、体の接触がなくても畳、マット、タオルなどを介してうつり、さらに家庭内で誰かが発症すれば子どもにも広がります。
この菌はカビ(真菌)の仲間で、約20年前にスポーツ交流で海外から持ち込まれました。感染した場所が体であれば、体表に赤く、少しカサカサした円形か環状の斑点が表れ、頭の場合はフケや脱毛がみられます。
診察では、患部表面のカサついた部分を少しこすって皮膚を採取し、顕微鏡で観察するか、培養検査をして診断を確定させます。体の皮疹には抗真菌薬を1か月以上塗りますが、皮疹が多いか、薬を塗って治った後に再発した場合、あるいは頭部の感染が明らかな時は抗真菌薬を内服します。
ただ、皮疹のかゆみが強くない人や、菌が頭部の毛穴に潜んで症状が全く出ない「無症候性保菌者」もいます。後者による集団感染を防ぐには、「ヘアブラシ法」と呼ばれる特殊な検査でカビの存在を確認し、早めに治療を始めなければなりません。
部活動が終わったら、なるべく早くシャワーを浴びたり、柔道着など練習で使った着衣をこまめに洗濯したりすることも感染予防には有効です。症状からトンズランス感染症が疑わしい子がいれば、集団発生と家族内発症に注意した上で、部活動は休ませ、まずは最寄りの皮膚科の専門医に相談してください。
【略歴】
森脇真一(もりわき・しんいち)
皮膚科専門医。大阪医科大卒。京都大、浜松医科大などを経て2009年から現職。医学博士。
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