森本昌宏「痛みの医学事典」
医療・健康・介護のコラム
ビリビリとした痛みが「発作的」「しびれを伴う」「長時間続く」なら神経痛かも…どう治療する?
日本人は大の温泉好きである。骨休めのための温泉旅行はもちろんのこと、昔から関節の痛みや神経痛があると「湯治」へと出かけたものである。湯ぶねで、ほっこり、ゆっくりと 浸 かっていれば、“ 痛いの痛いの飛んでけ ”となるのである。
ところで、温泉や入浴剤の効能として、よく挙げられている「神経痛」って何だろう? 神経痛といえば、ビリビリ、ピリピリとした痛み、電気が走るような痛みと思われているようだが、「ねん挫」や「すり傷」による痛みでも、ビリビリと痛むことはある。しかし、これらの痛みを神経痛と考える方はまずおられないだろう。
「末梢神経の走行に沿って起きる発作的な痛み」

神経痛は、医学的には「神経障害性 疼痛 」と呼ばれ、「 末梢 神経の走行に沿って起きる発作的な痛み」のことである。末梢神経の根元ないしは、神経そのものの障害によって起きる痛みであり、「特発性」( 三叉 神経痛や舌咽神経痛のように、ある刺激を引き金として、突発的に起こるもの)、「症候性」(圧迫などによって起きる 坐骨 神経痛、ウイルスによる帯状 疱疹 後神経痛など)に大きく分けられる。体には数多くの末梢神経が張り巡らされており、その神経の名前を冠した神経痛となると、枚挙にいとまがない。神経痛の種類たるや山ほど、なのである。
なお、その共通の特徴としては、「痛みが長時間続く」「しびれを伴う」「痛みが発作的に襲ってくる」「普段は何でもない刺激を強い痛みとして感じる」などがある。なお、入浴などで温めると痛みが和らぐこと、さらに、従来からある鎮痛薬では効かないことも特徴と言えるだろう。
さて、この神経痛に対して、最も多く用いられている薬のひとつに「ガバペンチノイド」がある。今回は、このガバペンチノイドについて紹介しよう。
抗てんかん薬が効く理由
ガバペンチノイドとは、平たく言うならば抗てんかん薬(抗 痙攣 薬)の仲間である。難しく言うと、「カルシウムイオン(Ca2+)チャネルのα2δリガンド」となる(こりゃ、難しい!)。カルシウムチャネルは、神経での信号伝達に大切な役割を果たしている。体のなかで何らかの異常が起きると、細胞内のカルシウムの増加を引き金として、痛みを伝える神経伝達物質が放出される。カルシウムが多くなった神経では、神経伝達物質の増加によって信号の伝達がパンク状態となる。これが、痛みを発生させてしまうのだ。
ガバペンチノイドという薬は、細胞内にカルシウムが入り込む入り口(これがカルシウムチャネル)にふたをするのである。ふたをするとカルシウム濃度が下がり、神経伝達物質が放出されにくくなるのだ。
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