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アラサー目前! 自閉症の息子と父の備忘録 梅崎正直

医療・健康・介護のコラム

クリニック中が大歓声! 10年通って1本の虫歯を治すまで

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20年ぶりに理容店再デビューも

 一つのことをできるようになるまで、他の子よりも長い時間がかかる洋介だが、それが達成できた時の喜びはひとしおである。その点は、他の親よりもトクしている部分だと思う。そして、絶対に無理だと思ったことだって、いつかは乗り越えられるものだと教えられるのだ。

もうすっかり慣れた様子

もうすっかり慣れた様子

 以前のコラムに、通っていた理容店から断られたことを書いた。そのため小学校低学年から、洋介はずっとお風呂場で妻に髪を切ってもらっていたのだった。しかし、20代になって、やはり、それなりに若者らしい髪形にしてやりたくなり、思い切って理容店で頼んでみたところ、若い理容師さんが「僕、経験があるから、やりますよ」と言ってくれた。

 実に15年ぶりに理容店に入った洋介。後方からハサミが出てきたりすると、びっくりしてしまうこともあったが、理容師のお兄さんが、寡黙ながらていねいに、時間をかけて切ってくれたおかげで、最後まで座っていることができたのだ。お兄さんの経験と技術もあったが、洋介本人も知らず知らずのうちに成長していたのだろう。これで、「ママの散髪屋さん」も約15年で閉店。その間に洋介も、わずかに白い毛が見つかるような年齢になっていた。

 その後、この理容師さんが店をやめ、両親が営む理容店を継ぐことになったので、少し遠いがそちらの店へ。「場所が変わるとどうかな?」という不安があったが、スムーズに調髪してもらうことができた。洋介の場合、なじむのは「場所」よりも「人」だったようだ。

世界を広げた洋介自身の力

 というわけで、アラサーを前にして、歯医者さんと理容店という新しい世界を獲得した洋介。小学校に入った頃は、通っていたスイミングスクールや理容店に「出入り禁止」とされ、世界が狭まっていくような悲しい思いをしたものだが、20年という月日を経て洋介は、間違いなく、自分自身と周囲の世界を変えてきたのだった。身長もわずかに僕を超えた姿を見て、頼もしく思う。(梅崎正直 ヨミドクター編集長)

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梅崎正直(うめざき・まさなお)

ヨミドクター編集長
 1966年、北九州市生まれ。90年入社。その年、信州大学病院で始まった生体肝移植手術の取材を担当。95年、週刊読売編集部に移り、13年にわたって雑誌編集に携わった。社会保障部、生活教育部(大阪本社)などを経て、2017年からヨミドクター。

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