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今井一彰「はじめよう上流医療 あいうべ体操で元気な体」

医療・健康・介護のコラム

「よくなる」「できる」…自分への言葉かけで体が変わる 炭治郎もやってるペップトーク

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「盛り上がっている!」の言葉でカラオケの点数アップ

 どんなときでも平常心を保っておきたいものですが、時にはそこから逸脱した方が良い場合もあります。例えば、カラオケで熱唱する時。採点できるカラオケマシンで高得点を出すために、歌う前に「盛り上がっている!」と言葉を発すると点数が上がる、という研究があります。そしてバスケットボールのフリースローの前に、「早く」と急かすような言葉を発すると成功率が下がっていくという研究もあります。

 前者は言葉のプラセボ効果、そして後者はノセボ効果と言えますね。口癖でなくても、とっさに出た短い言葉でも、十分に行動の変化を変えていく力を持っているということです。後は、それをどう扱うかです。

Brooks, A. W. (2014). Get excited: Reappraising pre-performance anxiety as excitement. Journal of Experimental Psychology: General, 143(3), 1144-1158.より (今井改変)

Brooks, A. W. (2014). Get excited: Reappraising pre-performance anxiety as excitement. Journal of Experimental Psychology: General, 143(3), 1144-1158.より (今井改変)

勇気づけの短い言葉「ペップトーク」

 ペップトークとは、試験や試合などの本番前にかける勇気づけの短い言葉です。日本ペップトーク普及協会の岩崎由純代表理事が中心となって広めています。皆さんも映画などで、監督やコーチが選手たちに向かって、やる気を高めて困難に立ち向かっていけるようなアドバイスをしているのを見たことがあるでしょう。ペップとは元気とか活気という意味を持ちます。ペップトークは元気を与える言葉です。では、誰に元気を与えるのか。そう、まずは自分自身です。自分にかける勇気づけの言葉をセルフペップトークといいます。

 岩崎さんはスポーツトレーナーとして、大切な試合に向かう選手たちがよりその力を発揮できるようにペップトークを駆使していますが、これは、試合を治療に置き換えても同じです。わざとストレスを与えられたときに、それに対処する言葉を変えるとストレス度合いを示す血中アドレナリン濃度が変化しないという報告があります。同じストレスでも言葉によって体の反応が変わるのです。

病気で不安な時こそ、自分を活気づける言葉を

 病気と 対峙(たいじ) して不安な気持ちの時こそ、自分の口から出てくる言葉を換えてみませんか。自分で自分をペップする(活気づける)のです。「うまくいく」「良くなっていく」「できる、できる、必ずできる」そんな短い言葉でよいのです。「鬼滅きめつやいば」でも、主人公の竈門炭治郎かまど たんじろうが「俺は今までよくやってきた! できる奴だ」と自分自身を励ます、鼓舞する言葉をかける場面がよく出てきます。それがセルフペップトークです。

 なんといっても、言葉を変えるのは“無料”ですから、素晴らしい上流医療です。コロナ禍で多くの人がつらい状況、困難な場面に遭遇しています。頑張っている自分を認めて、目の前の状況に立ち向かっている自分の一番の応援者に自分自身がなれると、希望の光が差してきます。私もそうやって、くじけそうなときは自分を応援しています。

セルフペップトークの一例

できる、できる、かならずできる(337拍子調で)

やるぞ、いまだ、力の限り

大丈夫 このままやれば うまくいく(575調で)

さあいこう 治癒に向かって まっしぐら

(今井一彰 みらいクリニック院長・内科医)

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今井 一彰(いまい・かずあき)

 みらいクリニック院長、相田歯科耳鼻科内科統括医長

 1995年、山口大学医学部卒、同大学救急医学講座入局。福岡徳洲会病院麻酔科、飯塚病院漢方診療科医長、山口大学総合診療部助手などを経て2006年、博多駅近くに「みらいクリニック」開業。日本東洋医学会認定漢方専門医 、認定NPO法人日本病巣疾患研究会副理事長、日本加圧医療学会理事、息育指導士、日本靴医学会会員。

 健康雑誌や女性誌などに寄稿多数。全国紙、地方紙でも取り組みが紹介される。「ジョブチューン」(TBS系)、「林修の今でしょ!講座」(テレビ朝日系)、「世界一受けたい授業」(日本テレビ系)、「ニュースウオッチ9」(NHK)、「おはよう日本」(同)などテレビやラジオの出演多数。一般から専門家向けまで幅広く講演活動を行い、難しいことを分かりやすく伝える手法は定評がある。

 近著に「足腰が20歳若返る足指のばし」(かんき出版)、「はないきおばけとくちいきおばけ」(PHP研究所)、「ゆびのば姿勢学」(少年写真新聞社)、「なるほど呼吸学」(同)。そのほか、「免疫を高めて病気を治す口の体操『あいうべ』」(マキノ出版)、「鼻呼吸なら薬はいらない」(新潮社)、「加圧トレーニングの理論と実践」(講談社)、「薬を使わずにリウマチを治す5つのステップ」(コスモの本)など多数。

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