田村専門委員の「まるごと医療」
医療・健康・介護のコラム
がん患者の4割が亡くなる前の1か月間に痛みやつらさ 国立がん研究センター調査
遺族5万人に人生の最終段階の医療アンケート
がん患者の約4割が亡くなる前の1か月の間に痛みやつらさを感じている、がんや心臓病などで、人生の最終段階における医療について医師と話し合った患者の割合は2~3割――。国立がん研究センターがん対策情報センターは10月31日、約5万人の遺族(うちがん患者の遺族約2万6000人)を対象にした、患者が亡くなる前の療養生活や受けた医療の実態についての全国調査の結果を発表した。初めての大規模な本格的調査という。
亡くなった場所で受けた医療に満足している割合はがんや心臓病などを含め6~7割で、必ずしも満足していない患者もいることが示された。介護について全般的な負担が大きかったと感じている家族は4~5割にのぼったほか、死別後に抑うつ症状がある人も1~2割、悲嘆が長引いている人も2~3割いる実態が明らかになった。
がん患者 痛みやつらさの割合高く
調査は、2017年にがん、心疾患、脳血管疾患、肺炎、腎不全で亡くなった患者の遺族を対象に、19年1~3月に郵送でアンケートした。有効回答数は2万1309人(うちがん患者の遺族1万2900人)で、回答は疾患別、死亡場所別に実際の死亡数の比率で調節した推定値で表した。
主な結果としては、亡くなる前1か月の療養生活を尋ねた問いで、疾患別に「痛みが少なく過ごせた」割合は38.9~47.2%(がん47.2%)で、逆に痛みを感じていた割合は22.0~40.4%(同40.4%)であることが推定された。痛みを含む「からだの苦痛が少なく過ごせた」割合は38.6~43.8%(同41.8%)で、身体的に何らかの苦痛を感じていた割合は26.1~47.2%(同47.2%)だった。がん患者では、痛みや気持ちのつらさを抱えている割合が他の病気よりも高かった。
一方、亡くなった場所の医療の質については、疾患別に「医療者はつらい症状にすみやかに対応していた」割合は68.2~81.9%(同81.9%)、「患者の不安や心配を和らげるように医療従事者は努めていた」割合は67.7~81.9%(同81.9%)で、がん患者の遺族で高かった。「全般的に満足している」割合も61.2~71.1%(同71.1%)で、がん患者の遺族が高かった。
人生の最終段階の医師との話し合い2~3割
人生の最終段階における医療やケアについての話し合いを尋ねた問いでは、「患者が希望する最期の療養場所について話し合いがあった」割合は14.5~36.5%(同36.5%)、「患者と医師間で、患者の心肺停止時に備え、蘇生処置の実施について話し合いがあった」割合は24.1~34.4%(同34.4%)だった。
また、患者と家族間で、患者が意思決定できなくなるときに備えた話し合いがあった割合は、28.6~42.4%(同42.4%)だった。人生の最終段階における医療について、医師や家族と亡くなる前に話し合いをしている患者は、がん患者ではやや多いものの全体的にはまだ限られていることがわかった。
死別後も含めた家族への支援を
家族の介護負担感や死別後の抑うつ症状について尋ねた問いでは、「全体的に負担感が大きかった」割合は40.9~50.7%(同40.9%)だった。死別後に抑うつ症状に悩まされている遺族も11.7~19.4%(同19.4%)、長引く悲嘆を感じているケースも18.4~30.1%(同30.1%)あり、特にがん患者の遺族で死別後も精神的な負担が続く割合が高いことが示された。
調査は、第3期がん対策推進基本計画で、国は実地調査や遺族調査などを定期的、継続的に行って、緩和ケアの質の向上に努めるようされたことに基づいている。調査結果について、すべての医療従事者への緩和ケアの普及、苦痛を軽減するための治療技術の開発、患者や家族への緩和ケアに関する理解の促進などに加え、死別後も含めた家族に対する支援が必要であることが示されたなどとしている。
調査を担当する同センターがん医療支援部の加藤雅志さんによると、引き続き今年度は、対象をがん患者の遺族に絞り、人数も約8万人に増やして調査を進めている。加藤さんは「さらに詳しく、都道府県別の違いなどについても調べていきたい」としている。(田村良彦 読売新聞専門委員)
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