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過敏性肺炎…カビ原因 アレルギー

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 非常に小さな物質を繰り返し吸い込むことで起きるのが「過敏性肺炎」です。原因となる物質で多いのが、夏場に湿気で屋内に発生するカビで、アレルギー反応によって肺に炎症が生じます。カビなどを吸い込まないようにすることが必要です。(長尾尚実)

  鳥のフンも注意

 カビによる過敏性肺炎は、7月をピークに6~9月に発症するため、「夏型過敏性肺炎」とも呼ばれます。湿度がより高い西日本に患者が多いとされます。

 呼吸で気管と気管支を通った空気は、肺にある小さな袋(肺胞)に運ばれます。高温多湿になると繁殖する「トリコスポロン」というカビは、胞子の大きさが3~10マイクロ・メートル(マイクロは100万分の1)と小さく肺胞まで入り込みます。

 体には、細菌やウイルスなどの病原体や異物が侵入すると、免疫細胞の一種「リンパ球」などが攻撃する仕組みがあります。カビを常に吸い込むような環境だと、攻撃が過剰になり、肺胞など自分の組織も一緒に傷つけて炎症を引き起こします。カビ以外にも、鳥のフンや羽毛に付くたんぱく質なども原因となるので、羽毛布団やダウンジャケットには注意が必要です。

  発熱やせき

 個人差もありますが、症状には発熱やせき、息切れなどがあります。肺では、アレルギー反応による炎症が起こり、繰り返すと、肺胞が硬くなり酸素と二酸化炭素の交換がうまくできなくなります。発熱は、微熱から高熱まで人によって様々です。

 典型的な症状は「たんの出ない乾いたせき」です。病原体が原因となる一般的な肺炎は、血液中の白血球が集まり攻撃して分泌物が増え、たんが出ます。過敏性肺炎はアレルギー反応によるせきのため、分泌物が少なく、たんが出ません。

  掃除で環境改善

 問診では、住居の構造や築年数、寝室の方角など、生活環境を細かく聞きます。胸部レントゲンやCT(コンピューター断層撮影法)の画像で肺の状態を確認し、血液検査でアレルギーの要因となる抗体が出れば、ほぼ診断できます。

 軽症なら、3日ほど入院して様子を見るうちに回復しますが、抜本的な対策には、原因となるカビの除去が欠かせません。エアコンや加湿器、台所、風呂場などにカビは繁殖しており、掃除やリフォームで環境を改善します。必要に応じてアレルギーを抑えるステロイド薬を飲みます。

 呼吸困難を起こすほどの重症患者には、酸素吸入やステロイド薬の点滴治療を行います。症状が半年以上続くと慢性化しており、急激に悪化すれば命にかかわることもあるため、免疫を抑制する薬を使います。

 新型コロナウイルスの影響で、今年は過敏性肺炎の診断が難しくなっています。レントゲンやCTで肺を撮影すると、新型コロナ患者に特徴的なすりガラス状の影が同様に見つかるためです。PCR検査で感染の有無を確認します。

 神戸大病院副病院長の西村善博さんは「『家の中で悪化する』『昨年の夏も同じような症状があった』といった状況に心当たりがあれば、過敏性肺炎が疑われます。専門医を受診して原因となる物質を突き止め、生活の場から取り除きましょう」と話しています。

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