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Dr.高野の「腫瘍内科医になんでも聞いてみよう」

医療・健康・介護のコラム

高1の娘がいます。HPVワクチンは打った方がよいのでしょうか?

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積極的勧奨中止で国民に判断が委ねられたが…

 実は、この問題については、積極的勧奨が中止された2013年にも、 ヨミドクターのコラム で取り上げています。

 「積極的にはお勧めしませんが、接種しないことを積極的に勧めるわけでもありませんので、どうぞご自分で判断してください」というのが、国の姿勢です。これは、国民一人ひとりが、自分の問題として考える絶好のチャンスなのかもしれません。

 結局、その後、国民を巻き込む議論にはならないまま、判断を委ねられた国民の多くは、「接種しない」という選択をして、今に至っています。日本の女の子の接種率は1%を切ったままです。われわれ医療者や学会はもっと強く声をあげ、行動すべきだったのではないか、という反省もありますが、やはり、国の判断の影響は大きかった、というのが実感です。

スウェーデンから子宮頸がん減少の報告

 なお、13年当時は証明されていなかった、「HPVワクチン接種による子宮頸がん発症予防効果」が、最近示されました。

 スウェーデンの女性167万人の解析で、17歳未満でHPVワクチン接種を行った場合、30歳までの子宮頸がん発症が88%減少していたと報告されています(1)。

 今後、世界各国から、より長期の報告や、子宮頸がんによる死亡数の減少の報告がなされてくるはずですが、その際に、「HPVワクチン接種が行われていない国」として日本人女性のデータが比較対照として報告されることになってしまうかもしれません。

皆さんの家庭でも議論を

 「国民に適切な情報提供ができるまでの間、定期接種の積極的な勧奨を行わない」というのが、13年当時の国の見解でしたが、7年たっても、「適切な情報提供」ができないということなのでしょうか。

 この間、2000~03年度生まれの女性のほとんどは、接種を受けないまま、定期接種の年齢を過ぎてしまいました。この4年間に生まれ、将来、子宮頸がんで亡くなる方のうち約4000人は、積極的勧奨を継続していれば命を救えるはずだったと推計されています(2)。

 この先も、積極的勧奨を再開しなければ、ますます多くの女性の命が失われていくことになります。救える命があるのに、手をこまねいて見ているわけにはいきません。国には、積極的勧奨のできるだけ早い再開を訴えていきたいと思います。

 国の対応を待っている間、われわれ国民も、きちんと議論を行い、一人ひとりがリスクとベネフィットについてよく考える必要があります。そして、10歳代の娘さんがいる家庭では、娘さんも交えてよく話し合い、積極的に接種を検討してほしいと思います。(高野利実 がん研有明病院乳腺内科部長)

 

参考文献

1) Lei J, et al: HPV vaccination and the risk of invasive cervical cancer. N Engl J Med 383:1340-8, 2020

2) Yagi A, et al: Potential for cervical cancer incidence and death resulting from Japan’s current policy of prolonged suspension of its governmental recommendation of the HPV vaccine. Sci Rep 10:15945, 2020

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高野 利実 (たかの・としみ)

 がん研有明病院 乳腺内科部長
 1972年東京生まれ。98年、東京大学医学部卒業。腫瘍内科医を志し、同大付属病院で研修後、2000年より東京共済病院呼吸器科医員、02年より国立がんセンター中央病院内科レジデントとして経験を積んだ。05年に東京共済病院に戻り、「腫瘍内科」を開設。08年、帝京大学医学部付属病院腫瘍内科開設に伴い講師として赴任。10年、虎の門病院臨床腫瘍科に最年少部長として赴任し、「日本一の腫瘍内科」を目標に掲げた。10年間の虎の門時代は、様々ながんの薬物療法と緩和ケアを行い、幅広く臨床研究に取り組むとともに、多くの若手腫瘍内科医を育成した。20年には、がん研有明病院に乳腺内科部長として赴任し、新たなチャレンジを続けている。西日本がん研究機構(WJOG)乳腺委員長も務め、乳がんに関する全国規模の臨床試験や医師主導治験に取り組んでいる。著書に、かつてのヨミドクターの連載「がんと向き合う ~腫瘍内科医・高野利実の診察室~」をまとめた、「がんとともに、自分らしく生きる―希望をもって、がんと向き合う『HBM』のすすめ―」(きずな出版)がある。

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