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地元世帯に一律3万円支給、「日本一の富豪村」引き継いだ一般財団法人

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地元世帯に一律3万円支給、「日本一の富豪村」引き継いだ一般財団法人

住吉学園の歴史について話す竹田理事長(神戸市東灘区で)

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 新型コロナウイルス禍の中、地元世帯に一律3万円を独自に支給し、住民生活を支援した団体が神戸市東灘区にある。かつて「日本一の富豪村」と呼ばれた、旧住吉村の財産を引き継いだ一般財団法人「住吉学園」だ。にわかには信じがたい施策を講じた住吉学園とは一体――。(伊藤孝則)

■地区に4億円超

 「神戸の経済と市民の生活の復興を願って、支援を行います」

 住吉地区の全約1万8500世帯に6月、「新型コロナ復興支援金」として、各世帯に3万円を支給すると記された封書が届けられた。送り主は住吉学園。条件は申請書に氏名や住所などを記入し、振込先の口座番号のわかる書類を添えるだけとあった。

 同地区の主婦(36)は「最初は信じられず、インターネットで学園のことを調べた」というが、8月には本当に3万円が振り込まれていた。最近第1子を出産したばかりといい、「おむつ代などにありがたく使わせていただきました」と感謝した。

 学園によると、申請をもとに支給したのは約1万4700世帯。総額は約4億4000万円に上る。同学園の竹田 おさむ 理事長(66)は「先人たちの遺産は住吉のために使うという理念から、支給が決まった」と話す。

 阪神大震災の時には、見舞金として半壊以上に10万円、一部損壊には5万円を各世帯に支給。東日本大震災や熊本地震の被災地にも寄付しているという。

■平均納税額が12倍

 旧住吉村は1950年、神戸市との合併で消滅した。六甲山の麓から海岸沿いまでの南北に長い地域で、江戸時代以降、住吉川を利用した水車による菜種油の製造や「御影石」の切り出しなどの産業で栄えた。1874年(明治7年)に住吉駅が開設されたことで、関西の財界人や実業家らが邸宅を構えるようになり、1900年頃、「日本一の富豪村」と呼ばれるようになった。

 それを裏付ける数字もある。32年の県内の所得税納税額が1世帯平均88円だったときに、旧住吉村では12倍超の1070円だった。

 学園は18年、学校経営を目的に「睦実践女学校」として設立。戦時中に経営不振となり、44年に旧住吉村に譲渡されて財団法人「住吉学園」となった。

 同女学校は48年に廃校となった後、旧住吉村が神戸市と合併した際、土地などの村有財産が学園に移管されることになった。

■「発展に尽くす」

 学園が多大な財産を受け継いだことで、今でも神戸市の決裁を経ずに、住民代表の協議で資産を管理・運用できるといい、竹田理事長は「制度に通じた当時の先輩方の知恵だ」と語る。

 阪神間の宅地開発が進んだ1960年代以降、地代による収入は増加。現在は約75万坪の土地を所有し、年間収入は約12億円に上る。

 固定資産税などを差し引いても4億円ほどが残り、地域への還元は、経済的な理由で進学が困難な学生に奨学金を支給▽新小学1年生にランドセルカバーをプレゼント▽健康増進のための温泉施設の運営――など多岐にわたっている。

 学園は長年住吉に在住する人やその子孫による理事が運営しており、竹田理事長は「住民による運営だからこそ、きめ細かな支援ができる。今後も住吉の発展に尽くしたい」と話す。

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