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訪問診療にできること~最期まで人生を楽しく生き切る~ 佐々木淳

医療・健康・介護のコラム

新型コロナで、在宅の看取りが大幅に増加……医療との付き合い方が変わる

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「何かあれば入院」から「できる限り在宅で」に流れが変わる

 逆に、在宅から病院(入院)へのハードルは高くなっています。在宅患者の緊急入院の約4割が肺炎や尿路感染などの発熱性疾患です。これらの発熱性疾患に対し、新型コロナウイルス感染症ではないと除外診断(検査での陰性確認)ができていなければ、入院を受け入れない(受け入れたくない)という病院が増えました。

 首都圏のある自治体の地域ケア会議では、通常であればスムーズに入院できるものが、受け入れ先病院の確保に難渋し、やむなく救急要請したというケースが複数報告されていました。

 一方で、患者さんの側も入院という選択を避ける傾向が強くなってきています。「何かあれば入院で」から「できる限り在宅で」という大きな流れが生まれつつあるように感じます。特に 看取(みと) りについては、最後の時間を一緒に過ごしたいという思いから、何があっても自宅や施設で最期まで、とはっきりと意思表示される患者・家族も増えています。

コロナ禍で在宅での看取りが50%増えた

 また、これまで人生の最期をどこでどのように過ごすのか、考えることを避けてきた患者さんやご家族にとっては、新型コロナの感染拡大はそんな対話を始めるきっかけにもなっているようです。そして、多くの方は、自宅で最期まで過ごすことを選択されています。

 実際、私が運営する医療法人社団悠翔会では、2020年の4月~10月の7か月間における患者さんの死亡場所は在宅が539人、病院が208人でした。19年の同時期は在宅が364人、病院が197人でした。比較すると、亡くなられた方が大幅に増加、しかも増加分のほとんどが在宅死であり、在宅で亡くなられた方は約50%も増加しています。

 病院や地域から紹介されて在宅医療が始まった方の数も、2割以上増加。看取りを前提に自宅に帰ってこられた方も相当数おられたのかもしれません。

 このような変化は、コロナ禍における一時的なものではないと思います。外来通院している患者さんも、在宅療養している患者さんも、これまで当たり前だと思っていたことが、必ずしもそうではないことに気づきつつある。そして、医療機関との新しい付き合い方を模索しているように感じます。

病院に行く必要を以前ほど感じなくなっている

 「通院しないといけない」「入院できたほうが安心」と思っていたけど、実はそうではないかもしれない(もちろん例外はありますが)。このことは、実は医師自身もそれとなく感じていたはずです。患者さんたちは、もはやコロナが怖いから病院に行かないのではなく、病院に行く必要を以前ほど感じなくなっているということではないでしょうか。

 もちろん、コロナ禍でも発熱患者を断らなかった診療所には、外来患者さんたちはきちんと戻ってきています。医療機関はいまこそ、患者さんの真のニーズをキャッチする努力をすべきだと思いますし、地域住民はそれを見ているとも思います。(佐々木淳 医師)

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佐々木淳(ささき・じゅん)

 医療法人社団悠翔会理事長・診療部長。1973年生まれ。筑波大医学専門学群卒。三井記念病院内科、消化器内科で勤務。井口病院(東京・足立区)副院長、金町中央病院(同・葛飾区)透析センター長を経て2006年MRCビルクリニック(在宅療養支援診療所)設立。2008年、団体名を悠翔会に改称。首都圏15か所で在宅療養支援診療所を運営する。

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