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ココロブルーに効く話 小山文彦

医療・健康・介護のコラム

【Track7】コロナストレス対応の現場から(上) 在宅による不眠、不安からの頭痛、そして揺らぐ高齢者の死生観

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 新型コロナウイルス感染症はいまだ終息せず、4月の緊急事態宣言発令から半年余りが経過しました。感染への不安だけでなく、社会環境と生活様式の変化から多様なストレスも 蔓延(まんえん) しました。今年10月初めに発表された日本医師会の調査では、新型コロナの影響で精神的な不調やストレスを感じている人は、全体のおよそ35%にものぼるとのことです。また、前年比で減少が続いていた国内の自殺者数が、7月以降増加に転じるなど、コロナ禍によるメンタルヘルスへの影響が表れています。今、医療・産業の現場で起こっているコロナ関連ストレスの事例をいくつか提示し、ストレスによる影響が重症化しないための予防策や心の在り方について考え、実践していければと思います。

 CONTENTS

  • Part1:テレワーク・在宅勤務で過労に至った管理職の40代男性
  • Part2:看護師・母・妻の3役をこなす30代女性の疲弊
  • Part3:妻の受診に同行する老年男性の死生観の揺らぎ

Part1:テレワーク・在宅勤務で過労に至った管理職の40代男性

【Track7】コロナストレス対応の現場から(上) 在宅による不眠、不安からの頭痛、そして揺らぐ高齢者の死生観

 ケンジさんは、IT関連企業の中間管理職です。会社全体がテレワークを進めたことで、4月以降現在まで、社員、スタッフの出社率は1割ほどです。

 数年前の昇進時に、仕事量や責任が増えたことで、緊張感から不眠症となった既往があり、今年の8月半ばにしばらくぶりに受診されました。

 この2週間、ほぼ毎日のように早朝に覚醒し、日中の集中力が下がっているとのこと。勤怠の様子を聞くと、5月以降、明らかに時間外勤務が増えています。片道1時間ほどの通勤時間を気にしないでいいことが、かえって朝早くから夜遅くまで仕事をする結果になってしまったようです。

 ケンジさんによると、「オンラインで対面するコミュニケーションは限られていて、メールなどのテキストによるコミュニケーションが圧倒的に多くなっている」とのことです。以前から、社会全体で進んできた傾向ではありますが、テレワークが増えたことで、それが加速したことは間違いありません。ちょっとした確認や部下の 進捗(しんちょく) を尋ねるのも、今までのように顔を合わせていたら、「あれ、どうなっていますか?」「こんな感じですね」など、簡単なやりとりで済みますし、ちょっとした誤解や 齟齬(そご) が生じても、解決は難しくありません。

 さらに、文章でのやりとりならではの手間や煩わしさもあります。部下も同僚も、メールの書き方にはそれぞれの特徴があり、真意が読み取りにくく、テキストによる再確認が増えたとのことです。オンラインでのグループリーダー以上の打ち合わせでも、やはり日常的にテキスト伝達では漏れ落ちている情報の再確認が多いため、逆に時間がかかってしまったり、回数の頻度も増えてしまったりしているようです。

 しかも、急な打ち合わせ、問い合わせがしばしば割り込んでくるので、そのときに自分がやっている仕事への集中が途切れてしまうことも少なくありません。部署全体のマネジメントでも、オンラインではむしろ時間がかかってしまうのでしょう。

 現在、ケンジさんは、感染リスクを下げるため、自分で自動車を運転して出社することがあるので、主治医としては不眠症のときに服用していた抗不安剤は処方しない方針としました。

 現在の社会情勢で、ケンジさん同様に、睡眠についての悩みを訴える患者さんは増えています。さらに、テレワークにおけるオンライン中心のコミュニケーションが、ストレスを増やしているケースも少なくありません。そこで、ケンジさんには次のようなことを伝え、今後も継続してサポートすることになりました。

▶よりよい眠りのためのポイント(睡眠衛生指導)

 誰にでも、睡眠-覚醒リズムがあります。これは生理的なシステムなので、意識づけだけでは変えることはできません。以下を習慣づけることが重要です。

  • 毎朝、決まった時間に起きる
  • 起床時に太陽の光を浴びて、食事を取る
  • コーヒーやお茶などのカフェインは、夕方以降取らない(アルコールもよくない)
  • 就床する90分前に入浴(十分温まる方がよい)をすませる

▶現状のコミュニケーションの工夫

 人と人が伝達できる情報量は、対面、電話、メール(テキスト)の順に少なくなります。表情や態度などの非言語的な部分の情報量はとても多いのです。次のような工夫を取り入れてみるのもよいでしょう。

  • 対面による打ち合わせやグループワークのための出社日を調整して設ける
  • 進捗状況のホウレンソウ(報告・連絡・相談)は定期的に行うよう取り決める
  • メール(テキスト)での不明点は、チャットや電話で迅速に確認しておく
  • Skype、Zoom、Teamsなどのツールを組み合わせ、用途別に振り分ける

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小山 文彦(こやま・ふみひこ)

 東邦大学医療センター産業精神保健職場復帰支援センター長・教授。広島県出身。1991年、徳島大医学部卒。岡山大病院、独立行政法人労働者健康安全機構などを経て、2016年から現職。著書に「ココロブルーと脳ブルー 知っておきたい科学としてのメンタルヘルス」「精神科医の話の聴き方10のセオリー」などがある。19年にはシンガーソング・ライターとしてアルバム「Young At Heart!」を発表した。

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