なが~く、楽しくお酒と付き合うために 重盛憲司
医療・健康・介護のコラム
「酒を飲まないと終わった気がしない」で依存症に……在宅勤務のワナ
新型コロナのステイホームは一段落し、「さあ、外に出よう!」と、Go To トラベルにGo To Eatと、国は国民の活動を促すためにお金を使っています。とは言っても、テレワークが続いている人も多く、国が提唱する新しい生活様式は続き、コロナ肥満、コロナうつが話題になっています。コロナ飲酒というのもあります。コロナ離婚も聞きますが、それってホント?
在宅ワークで飲酒時間が長くなる
在宅ワークと飲酒の関係で気になるのは、家飲みを始めると飲酒時間が長くなることです。通勤している場合、午後5時に仕事が終わったとしても、家に着くのは7時過ぎ、それから一杯となります。仮に会社の近くで一杯やるとしても、帰宅することを考えれば早めに切り上げなくてはなりません。
家で仕事をしていたらどうでしょう。仕事中は飲まないとしても、午後5時にパソコンを閉じた途端、プシュッと缶ビール。寝るまでには、たっぷり時間があります。電車に乗る必要もなければ、何も邪魔するものはなく、時間を気にせず飲酒に専念できますね。
一杯やらないと仕事が終わった気がしない
そんなパターンで酒量が増えてしまったのが、Aさんです。4月にほぼ在宅ワークになるまでは、週1回、会社帰りに近くの居酒屋で同僚と飲むのが楽しみでした。家ではときどき缶ビール1本程度。ところが在宅ワークになって、一杯やらないと仕事が終わった気がしないという習慣が身に付いてしまいました。毎日飲んでいるうちにみるみる酒量が増え、アルコール依存症を専門にする私のクリニックに来ることになってしまいました。
「なんだか、お酒を飲む意味が変わってきてしまったような気がします」とAさんは言います。会社帰りの同僚との一杯が、自宅で仕事終わりの一杯、それが二杯に……。「新しい生活」になり、飲み方が変わってしまったわけです。そこまでいかなくとも、在宅勤務で酒量が増えたという話をよく聞きます。
大量の空き瓶や空き缶が……
一方で、生活の変化に流されず頑張っている人もいます。緊急事態宣言が出た4月頃の話です。アルコール依存症で通院中の30歳代のBさんは午前中、マンションの清掃やゴミ出しの仕事をしています。受診の際に話してくれました。「いやー、コロナの騒ぎ以来、仕事が大変で。ゴミの量が増えてしまって。特に酒瓶、ビール缶が何倍にもなって」。日々、人が飲んだ酒瓶や缶の片づけをしながら、幸いに彼自身はお酒につかまることもなく元気にやっているようで安心しました。
生活スタイルが変われば、お酒の飲み方が変わり、生活での飲酒の意味が変わったと感じる人もいることでしょう。どうやって、適量でコントロールするか。それも新しい生活の大切な要素です。(重盛憲司 精神科医)
※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。
※個人情報は書き込まないでください。