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医療・健康・介護のコラム

「リスフラン関節」の捻挫は長引くこともあるので、まずは安静を

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 日本ではある程度落ち着いているように見える新型コロナウイルス感染症ですが、世界では、まだ拡大しています。これからの季節はインフルエンザの流行も懸念されますので、スポーツをする際にも、さらに十分な注意が必要です。

 さて、足首の捻挫は最も頻度の高いスポーツのけがのひとつです。足の甲を捻挫してリスフラン関節の 靭帯(じんたい) を損傷することもあります。リスフラン関節は、ちょっと聞き慣れない名称かもしれません。今回はハンドボール選手のケースです。

 F君は大学生です。ハンドボールの大会が近くなり、練習内容も濃くなっていました。3人対3人の練習で相手をかわしてシュートをした際、右足の着地で足をひねってしまいました。足の甲の痛みで体重をかけることができなくなり、チームメートに肩を借りて、病院を受診しました。

いわゆる足首の捻挫とは異なる

 足には 脛骨(けいこつ)腓骨(ひこつ) と足関節をなす 距骨(きょこつ)(かかと) の骨である 踵骨(しょうこつ) 、足の指の骨や中足骨、そして 足根骨(そっこんこつ) と呼ばれる骨があります。これは、前腕に 橈骨(とうこつ)尺骨(しゃっこつ) があり、指の骨や中手骨、手根骨があるのと似た構造ですね。足根骨には三つの 楔状骨(けつじょうこつ)舟状骨(しゅうじょうこつ) 、立方骨の五つの骨があります。この中でも楔状骨・立方骨と中足骨がなす関節をリスフラン関節と呼びます。この関節は強靭な靭帯で固定されており、足のアーチにおいて重要な位置にあります。

「リスフラン関節」の捻挫は長引くこともあるので、まずは安静を

 捻挫とは、外力により関節が生理的な範囲を超えて動いてしまい、関節を安定させている靭帯や関節包が損傷することです。 足首の捻挫では、主に足関節外側にある距骨と腓骨をつなぐ前距腓靭帯(ぜんきょひじんたい)を損傷します 。頻度は少ないですが、足首を伸ばした状態で荷重とひねりの力が加わることで、足の甲にあるリスフラン関節の靭帯を損傷することがあります。単純X線写真では、 母趾(ぼし) と第2趾の中足骨の間が開き、時に楔状骨の 剥離(はくり) した小さな骨のかけらが見られることもあります。

「リスフラン関節」の捻挫は長引くこともあるので、まずは安静を

 この関節を損傷すると、前足に荷重をかけた際に痛みが生じます。損傷の程度によっては歩行が困難となり、約1か月(場合によっては1か月半)は、この関節に体重をかけずに保つ必要があります。前距腓靭帯損傷の場合、足の「内がえし」の動きをブレース(サポーターのような補装具)などで固定すれば、早期から荷重をかけることができますが、それとは状況が異なります。また、踵のみで体重をかけることや、足首が硬くならないように動かすことは大丈夫なので、取り外し可能な装具を使うこともあります。

 それでは、F君の経過です。

 体重をかけないよう日中は副木(シーネ)で足を固定し、松葉づえで過ごしました。1日に何度か固定を外して足首や足の指先を動かす練習をしました。腫れと痛みは段階的に落ち着き、約1か月後から、型取りして作成した足底板(インソール)を靴に入れて、体重をかけての歩行を開始しました。足周囲の関節の運動や、筋力訓練、荷重バランスの調整などのリハビリも行いました。1か月後にスムーズにつま先立ちができるようになり、軽く走る練習を開始しました。

軽傷なら、まずはリハビリとインソール使用で

 リスフラン関節の損傷が軽度だった場合、中途半端な安静期間を経てスポーツに復帰してしまうことで、痛みがなかなか引かずに長引くこともあります。特に、前足部で駆ける動作で痛みが出て、十分なパフォーマンスが出せなくなります。仮に軽傷で、すみやかに練習に復帰する必要があったとしても、まずはしっかりとリハビリテーションを行い、インソールを使用することも勧められます。ですが、できるだけ最初の段階でしっかり治しておきたいですね。(大関信武 整形外科医)

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大関 信武(おおぜき のぶたけ)

 整形外科専門医・博士(医学)、読売巨人軍チームドクター、日本スポーツ医学検定機構代表理事、日本スポーツ協会公認スポーツドクター

 1976年大阪府生まれ、2002年滋賀医科大学卒業、14年横浜市立大学大学院修了。15年より東京医科歯科大学勤務。野球、空手、ラグビーを経験。スポーツ指導者などへのスポーツ医学知識の普及を目指して「スポーツ医学検定」(春、秋)を運営している。東京2020オリンピック・パラリンピックでは選手村総合診療所整形外科ドクター。

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