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佐藤純の「病は天気から」

医療・健康・介護のコラム

「雨が降ると膝が痛い」は本当か? 実験でわかった気圧と慢性痛の関係

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 私が天気痛のメカニズムを解明しようと決意したのは、あるテレビ番組の収録がきっかけです。今から二十数年前のことです。

テレビ番組の収録で痛みを再現

天気が悪くなると「膝が痛む」は本当か? 実験でわかった気圧と慢性痛の関係

 「梅雨になると膝が痛むとか、古傷が痛むとかいう話をよく聞くが、それが本当かどうか確かめたい」という依頼が、テレビ局からありました。当時、慢性の痛みがある患者さんのなかに、天気の話をする人が多いことを感じていたので、この機会にそれを確かめてもいいかなと思って引き受けました。気圧、温度、湿度を調整できる実験室に、「雨が降ると膝が痛くなる」という2人の被験者に入ってもらって、梅雨時、すなわち雨が降り続くときと同じように湿度を80%まで上げ、それから気圧を下げてみました。雨が降ると膝が痛むなら、実験室の湿度と気圧を雨降りと同じ状態にすれば、膝の痛みが出るかもしれないと考えたのです。

 結果は期待したとおりで、被験者が天気の崩れるときに感じている膝の痛みが再現されました。また、膝の周りの皮膚温が下がって、むくみも確認できました。このような実験は初めての試みで、自分でもうまくいくのか半信半疑だったので、テレビの収録を無事に終えることができたときはホッとしたことを覚えています。ただ、「なぜ、このようなことが起きるのか」というディレクターの質問には答えることができず、私は「その原因を探りたい!」と強く思い、「誰もやっていないなら、自分がこの仕組みを解明しよう」と決意しました。「天気と痛みの関係がわかれば、救われる患者さんが大勢いるはずだ」と考えたのです。

慢性痛ラットで実験

 天気が崩れると変化するものに、温度、湿度、気圧などがあります。そのなかで、温度と湿度については、環境生理学の分野で多くの知見があります。一方、気圧については調べが少なく、天気でみられるような微小な変化が身体に及ぼす影響については、よくわかっていません。特に慢性痛との関連については、調査研究ばかりで、メカニズムを探るための実験はまったく行われていませんでした。

 そこで私は、気圧の変化によって本当に痛みが増すのかどうかを確かめるために、まず動物実験を行うことにしました。使ったのは動物用の小さな装置で、日常の天気変化と同程度に気圧と気温を変化させることができます。その中に、後ろ足の関節に炎症を起こして慢性痛のあるラットを入れ、気圧の変化によって痛み行動がどう変化するかを見たのです。

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佐藤 純(さとう・じゅん)

 愛知医科大学医学部学際的痛みセンター客員教授。中部大学教授。
 1958年、福岡県久留米市生まれ。東海大学医学部卒業後、名古屋大学大学院医学系研究科で疼痛とうつう生理学、環境生理学を学ぶ。同大学教授を経て、現職。2005年より、愛知医科大学病院痛みセンターにて、日本初の気象病外来・天気痛外来を開設。

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