文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

大人の健康を考える「大人び」

医療・健康・介護のコラム

脚の痛み(5)体の新しいバランス 探って

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

  このシリーズでは、関節外科が専門で関西労災病院(兵庫県尼崎市)副院長の津田隆之さんに聞きます。(聞き手・長尾尚実)

脚の痛み(5)体の新しいバランス 探って

 股関節を人工関節に置き換える手術を受けた人が、特に気をつけなければならないのが細菌感染です。人工関節の周りに黄色ブドウ球菌や大腸菌などが増殖する場合があります。日本整形外科学会のまとめによると、患者の0・1~1%で細菌感染が起き、その半数が術後1年以内とされます。

 これらの細菌は皮膚や腸内にもいる常在菌ですが、人工関節の周囲に集まるとバイオフィルムという膜を作るため、抗菌薬での殺菌が難しくなります。感染が確認されれば、人工関節を抜いて治療せざるを得ません。痛くて腫れている感じがする、動かしにくいなどの症状があれば、すぐ受診してください。体調を維持して免疫力を落とさないことも大切です。

 手術で痛みはなくなりますが、多くの人が最初は「歩きにくい」と違和感を訴えます。手術前に股関節の痛みを避けるため無意識に不自然な歩き方をしていたことと、股関節周囲の筋力が低下したことで体のバランスを取りづらくなるからです。術後しばらくは理学療法士らと一緒に新しいバランスの取り方を探る必要があります。

 約1か月のリハビリで股関節が痛む前の動きができるようになります。マラソンや激しい運動はできませんが、ハイキング程度は問題ありません。ただし人工関節の特性上、正座は可能ですが、しゃがみ込むなど関節を大きく曲げる動作はできないため、和式トイレは使えません。平泳ぎなど関節を回す動きも控えてください。

 順調に回復すれば、年1回のレントゲン検査で人工関節の様子を確認するだけです。細菌感染に注意し、散歩など適度な運動で足腰の筋力を高めましょう。

津田隆之さん

【略歴】
 津田 隆之(つだ・たかゆき)
 三重県多気町出身。1982年、大阪大医学部卒、90年、同大学院修了。星ヶ丘厚生年金病院(現・JCHO星ヶ丘医療センター)整形外科部長、箕面市立病院医務局次長などを経て、2017年4月から現職。専門は関節外科、骨粗しょう症の疫学。市民向け講演会などで、脚の痛みを起こす病気や治療法、転倒予防について解説している。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

otonabi_logo_200

大人の健康を考える「大人び」
大人に特有の体の悩みに応えるコーナーです。各テーマの専門家がアドバイスします。

大人の健康を考える「大人び」の一覧を見る

最新記事