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医療・健康・介護のコラム

[女優 永作博美さん](上)もし子どもができなかったら…特別養子縁組を選んだ母親役を演じて

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 映画やドラマ、舞台と幅広く活躍している女優の永作博美さん。10月23日に公開された映画「朝が来る」(河瀬直美監督)では、子どもができないことに夫婦で悩み、特別養子縁組の制度を使ってわが子を迎える母を演じています。実生活では2人のお子さんのママとして、仕事と家事の両立に奮闘しています。子どもを持ち、育てること、家族への思いなどについて語っていただきました。(聞き手・田村良彦、撮影・中山博敬)

初の「河瀬組」 役積みにびっくり

[女優 永作博美さん](上)もし子どもができなかったら…特別養子縁組を選んだ母親役を演じて

――これまで多くの映画に出演していらっしゃいますけど、いわゆる「河瀬組」は初めてなんだそうですね。いかがでしたか。

 亡くなられた樹木希林さんが、「役者はみんな、河瀬組に1回行ってみるべきだ」って、生前おっしゃっていたそうです。実際にやってみて、その意味が分かりました。

――どういうことですか。

 「役者は何をすべきなのか」「役者って何だろう」と、役者というものを改めて考えさせられました。「できないことや届かないことが、いっぱいあるんだな」と、感じざるを得ませんでしたし、すべてに行き着くことができると思っていること自体が、 傲慢(ごうまん) なのではないかと思いました。「どうしても気づかないことがあると思ってもいいんだな」と割り切れるようになりました。

――これまで多くの映画やドラマ、舞台にも出ていらっしゃると思いますが、新しい境地にということでしょうか。

 そうですね。もちろんこれまでも、いろんな作品で、こういうふうにした方がいいとか、こういうふうにしてほしいという要求もあり、頑張ってきましたけど。

 河瀬組では、「役積み」といって、映画の登場人物が経験したであろう出来事を同じように体験します。たとえば、子どもを幼稚園に送り迎えしなければならない環境だったら、実際に子どもに朝ごはんを食べさせて、歯磨きをさせて、送って、夕方には迎えに行くということをやる。台本の中に、「あのとき、こんなところに行ったわね」というセリフがあったら、初デートという設定の場所に実際に行ってみます。

――映画に出てくるわけではないのに。

 はい、カメラに映ってはいないのに。「役積み」によって、全部その間を埋めていくんです。もちろん時間はたくさん取られるし、やることも増えるし、考えることも増えるんですけど、役に対して考えさせてもらえる時間がいっぱいあって、確実に 真摯(しんし) に役に向かうことができました。

短いシーンであっても 温泉に入って 料理を食べて……

――完成報告会見では、温泉でのエピソードを語っていらっしゃいましたね。

 子どもができないと分かって、2人で生きていこうと決断をした後に、夫婦で温泉に行くんですけど。前の撮影シーンの時間が押して、到着が遅い時間になってしまったんです。その日のうちに終えて帰らなければいけないと思っていたので、急ぐのかと思いきや……。

 仲居さんがやってきて、「浴衣を用意してあります。どうぞどうぞ、お風呂に入ってください」となって。「いいのかなあ」と2人で言いながら、お風呂から戻ってきたら、食事が用意されていて「お飲み物は?」なんて尋ねられて。こんな遅い時間にいいのかなあと思いながら、どこで(映画のスタッフたちに)見られているのかも分からず。

 そういったことを経験させられたうえで、本番の短いシーンを撮ったんですけど。「もう遅いから泊まっちゃおうか」って言われるんじゃないかと、ドキドキしましたね。

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