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Dr.高野の「腫瘍内科医になんでも聞いてみよう」

医療・健康・介護のコラム

がんに効くというサプリメントをもらいましたが、飲んでもいいですか?

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イラスト さかいゆは

イラスト さかいゆは

 サプリメントや健康食品に関する質問もよく受けます。

 「がんに効く」とされていたり、なんとなく「体にいい」と思われていたりするわけですが、科学的な根拠は乏しいものがほとんどです。それでも、多くのがん患者さんが、何らかのサプリメントや健康食品を使っています。

使用する患者の思いは様々

 患者さんの思いは様々です。

 「知人がこれでがんを克服したので、私もそれを信じて取り組んでいます」

 「効果があると信じているわけではないですが、もしかしたらいいことがあるかも、という気持ちで飲んでいます」

 「がんのために何かをしている、という安心感はあります」

 「まわりから強く勧められて、断りきれずに……」

担当医に怒られ、こっそり使う患者も

 担当医に相談したら怒られた、という話もよく聞きます。

 「そんなもの、効くわけがない」「すぐに全部やめなさい」「どうしてもやりたいなら、ここでは治療できない」

 頭ごなしに否定されてしまって、でも、やめる気持ちにはなれず、担当医にバレないように、こっそり使っている患者さんもおられるようです。実際、担当医に申告して使っている患者さんよりも多くの患者さんが、申告せずに使っていると推測されています。

 サプリメントや健康食品は、あまり害がないと思われがちですが、時に、肝臓障害などの副作用が生じることがあります。血液検査で肝臓の数値が急に上昇して、患者さんに尋ねてみたら、「実は、健康食品を使い始めたところでした」というのは、よくあることです。

 このような健康被害もあり、がん治療の効果に影響することもありますので、医療者としては、きちんと使用状況を把握しておきたいところですが、こっそり使われてしまうことが多く、頭を悩ませているわけです。そんな悩みを背景に、素直に申告した患者さんに対して、怒りをあらわにする医療者もいて、患者さんと医療者の溝がさらに深まるという悪循環に陥っています。

「わらにもすがる思い」で高価な健康食品購入

 そんな中、確実に伸びているのが、サプリメントや健康食品の売り上げです。命がかかわっているので、高価であっても、生活費を切り詰めてでも、と思う患者さんが多いようで、多額の費用が健康食品につぎこまれています。

 サプリメントや健康食品を扱う業者としては、患者さんの弱みにつけこんで、不安をあおればあおるほど、お金がもうかるので、あの手この手を使って、巧みな広告を展開しているわけです。「わらにもすがる思い」の患者さんに、「これにつかまるといい」と言って、助けにはならない「わら」を、高いお金で売りつけているという構図です。

 患者さん自身が、「何かをしなければいけない」と思うだけでなく、家族や親戚や知人など、まわりの人たちも、「何かをしてあげなければいけない」と考えがちです。がんになったことが知られた途端に、健康食品を勧める電話がかかってきたり、「ぜひこれを使って」と現物が送られてきたり、という話はよく聞きます。勧める方に悪気はなく、純粋に患者さんのためを思ってそうしているのでしょうが、患者さんには負担になることもあるようです。担当医に聞いたら「そんなの使うな」と言われるし、善意を無にするわけにはいかないし……。けっこう、根深い問題です。

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高野 利実 (たかの・としみ)

 がん研有明病院 乳腺内科部長
 1972年東京生まれ。98年、東京大学医学部卒業。腫瘍内科医を志し、同大付属病院で研修後、2000年より東京共済病院呼吸器科医員、02年より国立がんセンター中央病院内科レジデントとして経験を積んだ。05年に東京共済病院に戻り、「腫瘍内科」を開設。08年、帝京大学医学部付属病院腫瘍内科開設に伴い講師として赴任。10年、虎の門病院臨床腫瘍科に最年少部長として赴任し、「日本一の腫瘍内科」を目標に掲げた。10年間の虎の門時代は、様々ながんの薬物療法と緩和ケアを行い、幅広く臨床研究に取り組むとともに、多くの若手腫瘍内科医を育成した。20年には、がん研有明病院に乳腺内科部長として赴任し、新たなチャレンジを続けている。西日本がん研究機構(WJOG)乳腺委員長も務め、乳がんに関する全国規模の臨床試験や医師主導治験に取り組んでいる。著書に、かつてのヨミドクターの連載「がんと向き合う ~腫瘍内科医・高野利実の診察室~」をまとめた、「がんとともに、自分らしく生きる―希望をもって、がんと向き合う『HBM』のすすめ―」(きずな出版)がある。

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